ヒメジの基礎知識|旬・産地・選び方を魚屋が解説

ヒメジはスーパーではなかなか見かけない魚ですが、鮮魚店や市場では個性的な見た目と美味しさで根強い人気があります。フランス料理では「ルージェ」として高級食材に位置づけられているにもかかわらず、日本ではまだ知名度が低いのがもったいない魚です。今回は魚屋の視点からヒメジの旬・産地・選び方・栄養までくわしく解説します。
【ヒメジとはどんな魚か】
ヒメジはスズキ目ヒメジ科に属する小型の魚で、体色は鮮やかな赤色から橙色をしています。体長は15センチから25センチ程度で、あごの下に2本の細長いひげが生えているのが最大の特徴です。このひげは触覚器官として海底の砂をかき分けて餌を探すために使われています。見た目のインパクトがある魚ですが、実際に触っても問題なく、ひげも柔らかいので捌くときに怖がる必要はありません。
日本近海にはヒメジのほかにオジサンやウミヒゴイなど近縁種が数種類生息しており、まとめてヒメジ科と呼ばれています。市場では「ヒメジ」として一括りに扱われることも多いですが、いずれも味わいは似ており美味しい魚です。フランスでは「ルージェ(赤い魚)」と呼ばれ、ブイヤベースやソテーに欠かせない高級食材として古くから親しまれています。日本でもフレンチレストランでは使われることがありますが、家庭にはまだあまり浸透していない魚です。
【ヒメジの旬はいつか】
ヒメジの旬は夏から秋にかけて、7月から10月ごろです。この時期は餌を十分に食べて身がしまっており、うま味が最も強くなります。特に夏のヒメジは皮目の風味が豊かで、ソテーや塩焼きにすると抜群の美味しさです。
冬場は脂のりが落ちて身が少し淡白になりますが、もともと上品な白身魚なのでシンプルな料理には向いています。旬の時期を意識して購入することで、ヒメジの美味しさを最大限に楽しめます。鮮魚店で夏から秋にかけて見かけたときは迷わず手に取ってみてください。
【ヒメジの主な産地】
ヒメジは日本では主に西日本の沿岸に生息しており、水深10メートルから100メートル程度の砂泥底を好む魚です。主な産地は長崎県・鹿児島県・愛媛県・高知県・和歌山県などで、九州や四国の漁港での水揚げが多い魚です。地中海や東大西洋にも広く分布しており、ヨーロッパでの漁獲量も多い魚です。
日本国内では西日本の鮮魚店や市場では比較的よく見かけますが、関東以北ではあまり流通していないのが現状です。関東でも専門の鮮魚店や高級スーパー、フレンチ食材を扱う店では取り扱っていることがあります。見かける機会は少ないかもしれませんが、だからこそ見つけたときの喜びも大きい魚です。
【鮮度の良いヒメジの選び方】
魚屋としてヒメジを長年扱ってきた経験から、鮮度の良いものの見分け方をお伝えします。
まず体色を確認してください。新鮮なヒメジは体全体が鮮やかな赤色から橙色をしており、色にムラがなくツヤがあります。鮮度が落ちると体色がくすんでピンク色に近くなり、ツヤも失われます。ヒメジは体色の鮮やかさがそのまま鮮度のバロメーターになる魚なので、まず色で判断することが大切です。
次に目の状態を確認してください。目が澄んでいて黒目がはっきりしているものが新鮮です。目が白く濁っているものや目がくぼんでいるものは鮮度が落ちています。あごの下のひげも確認のポイントで、新鮮なものはひげがしっかりしていてハリがあります。ひげが折れ曲がったりしなびていたりするものは鮮度が落ちているサインです。身に触れる場合は弾力があるかどうかを確認し、押してすぐに元に戻るものを選んでください。
皮目の状態も重要です。ヒメジはソテーや塩焼きで皮ごと食べることが多い魚なので、皮に傷や変色がないかどうかを必ず確認してください。皮が傷ついているものは焼いたときにきれいに仕上がりません。
【ヒメジの栄養】
ヒメジは良質なたんぱく質を豊富に含んでいます。白身魚なので脂質は少なく低カロリーで、ダイエット中の方や健康を意識している方にも向いている食材です。ビタミンB群が含まれており疲労回復や代謝のサポートに役立ちます。またカリウムも含まれており体内の塩分バランスを整える働きがあります。
脂質が少ない分DHAやEPAの含有量は青魚や脂ののった魚に比べると少ないですが、消化が良く胃腸への負担が少ない魚です。子どもから高齢者まで幅広い世代が食べやすい食材で、洋風から和風まで幅広い料理に活用できます。
【ヒメジにまつわる豆知識】
ヒメジ科の魚の中に「オジサン」という名前の魚がいます。あごのひげがおじさんの無精ひげのように見えることからついた名前で、ユニークな名前として魚好きのあいだでは有名です。味わいはヒメジとほぼ同じで美味しく食べられます。市場や鮮魚店でオジサンという表示を見かけたら、それもヒメジの仲間だと思ってください。フランス料理のルージェとして提供される魚も、ヒメジ科の魚が使われています。日本では知名度が低い魚ですが、ヨーロッパでは古くから食文化に根ざした魚として親しまれてきた歴史があります。
【まとめ】
ヒメジは鮮やかな赤色の体色とあごのひげが特徴的な個性的な魚で、旬の夏から秋にかけては皮目の風味とうま味が最も引き立ちます。体色の鮮やかさとひげのハリを確認することで鮮魚店でも鮮度の良いものを見分けられます。フランス料理では高級食材として知られるヒメジですが、シンプルなソテーや塩焼きでも十分にその美味しさが楽しめます。見かける機会は多くない魚ですが、鮮魚店で出会ったときはぜひ手に取って、その独特の風味と美味しさを体験してみてください。
捌き方はおととチャンネルで解説しています。
https://youtube.com/channel/UCKgZWNzDVFenWKZGgvUjO6A

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