(番外編)釣れたら要注意!バラムツが販売禁止になった理由を魚屋が解説

釣りをしていると、狙っていない魚が釣れてしまうことがあります。外道と呼ばれるこうした魚の中でも、バラムツは特別な注意が必要な魚です。見た目は立派で食べられそうに見えますが、実は1996年から食品衛生法によって販売・営業目的での使用が禁止されている魚です。今回は魚屋歴20年以上の岸田が、バラムツとはどんな魚なのか、なぜ販売禁止になったのか、そして釣れてしまったときにどう対処すればよいのかを詳しく解説していきます。
【バラムツとはどんな魚か】
バラムツはスミレヤナギムシガレイ目タチウオ亜目バラムツ科に属する深海魚です。体は細長く銀色に輝いており、パッと見た印象はタチウオに似ています。体長は大きいものでは2mを超えることもあり、深海魚の中でもかなり大型の部類に入ります。生息域は水深200〜1000m程度の深海で、世界中の温帯・熱帯海域に広く分布しています。日本近海でも太平洋側を中心に生息しており、深海釣りや底物釣りをしていると思わぬところで釣れることがあります。
バラムツという名前の由来は、その鋭い歯にあるとされています。「バラ」はバラの棘のような鋭い歯を、「ムツ」は深海魚によく使われる名称を組み合わせたものといわれています。口の中には非常に鋭くて大きな歯が並んでおり、見た目のインパクトは相当なものです。釣り上げた際には歯に十分注意して扱う必要があります。
【バラムツの脂の特徴とアブラボウズとの違い】
バラムツを語る上で欠かせないのが、その異常なまでの脂の多さです。バラムツの身に含まれる脂質のほとんどはワックスエステルと呼ばれる成分で、その含有量は体重の約20〜40%に達するともいわれています。このワックスエステルは人間の消化酵素では全く分解できない成分で、体内に吸収されることなくそのまま排出されてしまいます。
同じくワックスエステルを含む魚としてアブラボウズがあります。アブラボウズも食べすぎには注意が必要な魚ですが、ワックスエステルの含有量はバラムツと比べると格段に少なく、適量を守れば多くの方が問題なく楽しめます。一方バラムツはワックスエステルの含有量があまりにも多いため、少量食べただけでも強い消化器症状が現れることがあります。お腹が緩くなるだけでなく、肛門から油状のものが自然に漏れ出してしまうという非常に不快な症状が起きることが知られており、これがバラムツが「食べてはいけない魚」として広く認知されるようになった最大の理由です。
【なぜ販売禁止になったのか】
バラムツが食品衛生法で販売禁止になったのは1996年のことです。それ以前は一部の地域でバラムツが食用として流通していたこともありましたが、食べた人が消化器症状を訴えるケースが相次いだことで問題が表面化しました。消費者が知らずに食べて体調不良を起こすことを防ぐために、国が販売・営業目的での使用を禁止するという措置を取ることになりました。
現在は食品衛生法第6条により、バラムツは「人の健康を損なうおそれのある食品」として販売・営業目的での提供が全面的に禁止されています。飲食店で提供することも、鮮魚店で販売することも法律で禁じられています。ただし自分で釣った魚を自己責任で食べること自体を法律が禁じているわけではありませんが、健康被害のリスクが非常に高いため食べることは強くおすすめできません。
同様に販売が禁止されている魚としてアブラソコムツがあります。アブラソコムツもバラムツと同じくワックスエステルを大量に含む深海魚で、見た目がバラムツに似ているため混同されることもあります。どちらも釣れた場合には食べずにリリースするか、適切に処分することが賢明です。
【バラムツが釣れてしまったときの対処法】
深海釣りや底物釣りをしていてバラムツが釣れてしまった場合はどうすればよいでしょうか。まず釣り上げた際には鋭い歯に十分注意してください。素手で口付近を触ることは非常に危険です。フィッシュグリップやタオルを使って安全に取り扱うようにしましょう。
リリースできる状態であれば速やかに海に返すのが最善です。深海魚は水圧の変化によって浮き袋が膨らんで浮いてしまうことがありますが、その場合は針を外してそのまま海に返してください。自然に深場に戻れることもあります。
持ち帰る場合は食べることを目的としないことが大前提です。標本として保存したい場合や、知人に見せたいという場合は持ち帰ることもあるかもしれませんが、絶対に食べないようにしてください。廃棄する場合は一般ごみとして処分することができます。
【バラムツにまつわる豆知識】
バラムツは世界的にも食用禁止や販売規制の対象となっている国や地域が多く、イタリアや日本以外でも食べることへの警告がなされています。その一方で一部の地域では昔から食べる習慣があったことも記録されており、調理法によって症状を軽減しようとする試みがあったことも伝えられています。しかしいずれの方法でもワックスエステルを完全に取り除くことは難しく、現在では食べることは推奨されていません。
また深海魚であるバラムツは非常に興味深い生態を持っており、研究対象としての価値が高い魚でもあります。その大量のワックスエステルは深海という高圧環境で浮力を調整するために蓄積されたものと考えられており、深海生物の神秘的な適応の一例として研究者の間でも注目されています。食べられない魚ではありますが、生き物としての面白さは十分に持っている魚です。
【まとめ】
バラムツは1996年に食品衛生法によって販売・営業目的での使用が禁止された深海魚です。禁止の理由は体重の20〜40%にも達するワックスエステルの含有量にあり、食べると消化器への深刻な影響が出ることが知られています。同じくワックスエステルを含むアブラボウズと比べてもその含有量は格段に多く、少量でも強い症状が出ることがあります。釣りで偶然釣れてしまった場合は鋭い歯に注意しながら安全に取り扱い、できればそのまま海にリリースすることをおすすめします。食べられない魚ではありますが、深海生物としての生態や体の仕組みは非常に興味深く、知れば知るほど海の奥深さを感じさせてくれる魚のひとつです。
魚の不思議な生態や捌き方についてはおととチャンネルでも発信しています。ぜひチャンネルをのぞいてみてください。
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