ムツの基礎知識|旬・産地・選び方を魚屋が解説

ムツはスーパーや鮮魚店でときどき見かける魚ですが、アジやサバほど一般的ではないため、どんな魚なのかよく知らないという方も多いのではないでしょうか。実は脂のりが抜群で料理の幅も広い、知る人ぞ知る美味しい魚です。今回は魚屋の視点からムツの旬・産地・選び方・栄養までくわしく解説します。
【ムツとはどんな魚か】
ムツはスズキ目ムツ科に属する深海魚で、日本近海に広く生息しています。体色は成魚になると黒みがかった褐色になり、大きな目と裂けたような口が特徴的な顔つきをしています。体長は大きいもので50センチを超えることもあり、存在感のある魚です。
ムツという名前の由来には諸説ありますが、「むつっこい(脂っこい・くどい)」という古い言葉からきているという説が有名です。その名の通り非常に脂のりが良く、加熱しても身がパサつかないため煮付けや塩焼きに向いています。鮮魚店では比較的高値がつくことが多く、贈答用や特別な日の食卓にも選ばれる魚です。
なお、ムツとよく似た魚に「クロムツ」がいます。見た目はよく似ていますが、クロムツの方がさらに脂のりが強く高級魚として扱われます。スーパーで「ムツ」と表示されている場合、どちらかを確認してみると面白いかもしれません。
【ムツの旬はいつか】
ムツの旬は秋から冬にかけて、10月から2月ごろです。この時期は水温が下がるにつれて脂をしっかり蓄えており、身のうま味が最も強くなります。特に11月から1月にかけてのムツは脂のりが抜群で、煮付けにすると皮目からじわっと脂が溶け出してきて格別の美味しさになります。
春から夏にかけても流通はしていますが、脂のりは冬場に比べると落ちます。旬の時期に食べるのが一番美味しいですが、深海魚であるムツは季節による味の変化が比較的緩やかなため、旬を外れた時期でも十分に美味しく食べられます。
【ムツの主な産地】
ムツは北海道から九州にかけての日本近海に広く生息しており、水深100メートルから300メートル程度の深い海に棲んでいます。主な産地は茨城県・千葉県・静岡県・長崎県などで、太平洋側と東シナ海周辺での水揚げが多い魚です。
特に茨城県や千葉県の銚子では良質なムツが水揚げされることで知られており、地元では昔から親しまれてきた魚です。深海に生息するため漁獲量が安定しないことも多く、入荷量が少ない日には鮮魚店でも見かけない日があります。見かけたときはぜひ手に取ってみてください。
【鮮度の良いムツの選び方】
魚屋としてムツを長年扱ってきた経験から、鮮度の良いムツの見分け方をお伝えします。
まず目の状態を確認してください。ムツは目が大きい魚ですが、新鮮なものは目が澄んでいて黒目がしっかりしています。目が白く濁っているものや表面がくぼんでいるものは鮮度が落ちているサインです。次に体表のツヤを見ます。新鮮なムツは全体的に黒褐色の光沢があり、触るとしっかりとした弾力があります。体がべたついていたり、押しても戻りが遅いものは避けた方がいいでしょう。
エラの色も重要なチェックポイントです。エラが鮮やかな赤色をしているものが新鮮な証拠です。茶色や灰色がかっているものは鮮度が落ちています。また、腹を触ってみて張りがあるかどうかも確認してみてください。腹がやわらかくなっているものは内臓の傷みが始まっているサインです。切り身で売られている場合は断面の色が透明感のある白色のものを選びましょう。
【ムツの栄養】
ムツは良質なたんぱく質を豊富に含んでいます。また脂質も多く含まれており、その脂にはDHAやEPAといった不飽和脂肪酸が含まれています。DHAは脳の働きをサポートする栄養素として知られており、EPAは血液をサラサラに保つ働きがあるとされています。脂がのった魚ほどこれらの栄養素が豊富に含まれる傾向があるため、脂のりの良いムツはDHAやEPAの摂取源として優れた食材です。
またビタミンB群やビタミンDも含まれており、疲労回復や骨の健康維持にも役立ちます。煮付けや塩焼きなどシンプルな調理法でも十分に栄養を摂取できるのがムツの魅力です。
【ムツに合う料理】
ムツは脂がしっかりのっているため、シンプルな調理法が一番美味しさを引き出せます。煮付けは定番中の定番で、甘辛いタレとムツの脂が絶妙に合います。塩焼きにすると皮目がパリッと焼き上がり、脂が香ばしく溶け出して絶品です。鮮度が非常に良いものであれば刺身でも食べられ、とろけるような食感が楽しめます。アラは潮汁や味噌汁に使うと深いうま味が出るため、捌いたときはアラも大切に使ってください。
【まとめ】
ムツは旬の秋冬に脂がしっかりのり、煮付けや塩焼きにすると格別の美味しさを発揮する深海魚です。目の澄み具合や体表のツヤ、エラの色を確認することで鮮度の良いものを選ぶことができます。見かける機会はそれほど多くない魚ですが、鮮魚店で見つけたときはぜひ手に取ってみてください。脂のりの良さと上品なうま味に、きっと驚くはずです。
捌き方はおととチャンネルで解説しています。
https://youtube.com/channel/UCKgZWNzDVFenWKZGgvUjO6A

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