魚屋が教える魚の塩締めと昆布締めの使い分け

塩締めと昆布締めはどちらも魚の下処理として使われる技法ですが、仕上がりの味わいや食感が異なり、向いている魚や料理も変わってきます。それぞれの特徴を理解して使い分けることで、魚料理のレベルが一段と上がります。魚屋が長年の経験をもとに、塩締めと昆布締めの違いと正しい使い分け方をくわしく解説します。
【塩締めと昆布締めはどう違うのか】
塩締めとは魚の柵や切り身に塩をふって一定時間おき、余分な水分を抜く技法です。塩の浸透圧によって魚の身から水分が引き出され、身がしまって食感が変わります。同時に臭みの原因となる水分も抜けるため、魚の臭みを抑える効果もあります。
昆布締めとは魚の柵を昆布で挟んで一定時間おく技法です。昆布に含まれるグルタミン酸(うま味成分)が魚の身に移り、うま味が増してしっとりとした食感になります。塩締めが「引き算の技法」であるとすれば、昆布締めは「足し算の技法」と言えます。塩締めは余分なものを取り除き、昆布締めはうま味を加えるという考え方で覚えておくとわかりやすいです。
【塩締めの特徴と向いている魚】
塩締めをすることで魚の身がしまり、ぷりっとした歯ごたえのある食感になります。余分な水分が抜けることで味が凝縮され、刺身にしたときに水っぽさがなくなります。また臭みの原因となる水分も同時に抜けるため、青魚や癖のある魚の臭みを抑えるのに効果的です。
塩締めに向いている魚はサバ・アジ・イワシ・サンマなどの青魚です。青魚は独特の臭みがあり鮮度も落ちやすいため、塩締めをすることで食べやすくなります。サバの締めサバや〆鯖はまさに塩締めの代表的な使い方です。また水分が多くて身が柔らかい魚、たとえばタチウオやシイラなどにも塩締めは有効です。身がしまることで切り分けやすくなり、刺身の仕上がりも美しくなります。
塩締めの時間は魚の大きさや種類によって異なりますが、薄い柵であれば15分から30分、厚みのある柵であれば1時間程度が目安です。塩をふりすぎると塩辛くなりすぎるので、薄くまんべんなくふることが大切です。塩締め後はキッチンペーパーで水気と塩をしっかり拭き取ってから使います。
【昆布締めの特徴と向いている魚】
昆布締めをすることで魚の身にグルタミン酸が移り、うま味が増してしっとりとした食感になります。身の水分が昆布に少し吸収されることで適度に引き締まり、刺身にしたときにとろけるような食感が生まれます。昆布の風味が魚に移ることで、刺身とは異なる奥深い味わいが楽しめます。
昆布締めに向いている魚は白身魚全般です。タイ・ヒラメ・カレイ・シマアジ・イトヨリダイ・カンパチなど、淡白でうま味が上品な魚に昆布のグルタミン酸が加わることで、味わいに深みが生まれます。もともとうま味の強い赤身魚や青魚には昆布締めの効果が感じにくいため、白身魚に使うのが基本です。
昆布締めの時間は2時間から4時間が基本で、長くても8時間以内が目安です。長すぎると昆布の塩分が強く移りすぎて魚本来の味が損なわれます。初めて作る場合は3時間程度から試してみてください。昆布は日高昆布が柔らかく扱いやすいため初心者におすすめです。
【塩締めと昆布締めを組み合わせる方法】
実は塩締めと昆布締めは組み合わせて使うことができます。まず魚に薄く塩をふって15分から30分おき、余分な水分と臭みを取り除きます。水気を拭き取ったあとに昆布で挟んで冷蔵庫でさらに2時間から3時間おきます。こうすることで塩締めで余分な水分を抜きつつ、昆布のうま味をしっかり移すことができます。白身魚に使うと特に効果的で、仕上がりのうま味と食感が格段に向上します。料理屋ではこの組み合わせで使うことも多く、ぜひ覚えておきたいテクニックです。
【料理別の使い分けの目安】
刺身に使う場合、白身魚には昆布締めが向いています。昆布締めにすることで刺身とは異なるしっとりとした食感とうま味の深みが加わります。青魚の刺身には塩締めが向いており、臭みを抑えてさっぱりと食べやすくなります。
寿司ネタに使う場合も同様で、白身魚の昆布締めは高級寿司屋でも使われる定番の仕込み方です。サバの押し寿司には塩締めしたサバを使うのが基本で、身のしまりと臭みの少なさがシャリとの相性を高めます。
焼き物や煮物に使う場合は塩締めが有効です。焼く前や煮る前に塩締めをしておくことで余分な水分が抜け、焼いたときに皮がパリッと仕上がりやすくなります。煮物の場合も水分が少ない分、煮汁の味がしみ込みやすくなります。
【保存における使い分け】
塩締めは保存性を高める効果もあります。塩が魚の表面に作用することで菌の繁殖を抑え、冷蔵での保存期間を少し延ばすことができます。翌日以降に食べる予定の魚に軽く塩締めをしておくと、鮮度を保ちやすくなります。昆布締めは保存性を高める効果よりもうま味を加える効果がメインです。昆布締めにした魚は昆布から外してラップで包み、冷蔵庫で翌日までに食べきるようにしてください。
【まとめ】
塩締めは余分な水分と臭みを取り除いて身をしめる技法で青魚や水分の多い魚に向いており、昆布締めは昆布のうま味を魚に移してしっとりとした食感と深みを加える技法で白身魚に向いています。この2つの技法の特徴と向いている魚を理解して使い分けることで、刺身や寿司・焼き物の仕上がりが格段に変わります。組み合わせて使うことでさらに美味しくなることも覚えておくと、魚料理のレパートリーが大きく広がります。ぜひ日々の魚料理に取り入れてみてください。
捌き方はおととチャンネルで解説しています。
https://youtube.com/channel/UCKgZWNzDVFenWKZGgvUjO6A

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