チカメキントキという魚をご存知でしょうか。赤い体色と大きな目が印象的なこの魚は、キントキダイの仲間でありながら、より大型になり脂の乗りも豊かな美味しい魚です。スーパーではなかなか見かけませんが、市場では秋から冬にかけてまとまって入荷することがあります。今回は魚屋として長年魚と向き合ってきた経験をもとに、チカメキントキの捌き方を丁寧に解説します。
【チカメキントキってどんな魚?】
チカメキントキはキントキダイ科に属する魚で、体長は30〜50センチほどになります。全身が鮮やかな赤色をしており、目が非常に大きいのが特徴です。この大きな目が「近目」に見えることから「チカメキントキ」という名前がついたという説があります。
キントキダイと見た目がよく似ていますが、チカメキントキの方が一回り大きく、体がより厚みを持っています。身は白身で上品な甘みがあり、脂の乗りも良いため、刺身・塩焼き・煮付けなど幅広い料理に向いています。
市場では「赤魚」としてまとめて扱われることもありますが、チカメキントキはその中でも食味が良いとされており、値段も比較的しっかりついている魚です。
【捌く前に知っておきたいこと|うろこに注意】
チカメキントキを捌くうえで最初に知っておきたいのが、うろこの硬さです。チカメキントキのうろこは非常に硬く、しっかりと皮に密着しています。普通のうろこ取りでは取りきれないこともあるため、包丁の背を使ってしっかりとこすり落とす必要があります。
私が市場でチカメキントキを仕入れるとき、問屋さんから「うろこが硬いから気をつけてな」と声をかけられることがあります。長年の付き合いでそういった一言を自然にかけてくれるのが市場の良いところで、こういった現場の情報が捌くときの段取りに直結しています。うろこが飛び散りやすいので、シンクの中か、ビニール袋の中で作業するのがおすすめです。
また、背びれや腹びれのとげが鋭いため、素手で触るときは怪我をしないように注意してください。作業前に調理用ハサミでひれをあらかじめカットしておくと、その後の作業がぐっとやりやすくなります。
【必要な道具】
チカメキントキを捌くにあたって、以下の道具を用意しておくとスムーズです。
出刃包丁は必須です。チカメキントキは骨がしっかりしているため、薄い包丁では頭を落とすときに苦労します。刃渡り15センチ以上のしっかりした出刃包丁を使うことをおすすめします。刺身にする場合は柳刃包丁(刺身包丁)もあると仕上がりが格段に良くなります。うろこ取りまたは包丁の背、まな板、キッチンペーパーも用意しておきましょう。
【チカメキントキの捌き方・手順】
1.うろこを取る
まずうろこをしっかり取り除きます。チカメキントキのうろこは硬くて飛び散りやすいので、シンクの中で作業するのがベストです。尾から頭に向かって、包丁の背やうろこ取りで全体をくまなくこすります。腹側や背びれ周辺など、うろこが残りやすい部分は特に念入りに確認してください。うろこが残っていると口当たりが悪くなるだけでなく、臭みの原因にもなります。
2.ひれをカットする
調理用ハサミを使って、背びれ・腹びれ・尻びれをカットします。とげが鋭いため、この工程をしっかり行うことで後の作業中の怪我を防ぐことができます。
3.頭を落とす
胸びれの付け根に沿って包丁を入れ、頭を落とします。チカメキントキは骨がしっかりしているため、出刃包丁をしっかり立てて一気に切り落とすのがコツです。ためらって何度も刃を入れると骨が砕けて身に骨が残りやすくなるため、思い切りよく切ることが大切です。
4.内臓を取り出す
腹に包丁を入れて内臓を取り出します。肛門から頭側に向かって浅く切り込みを入れ、内臓をかき出します。このとき胆のうを傷つけると苦味が身に移るため、丁寧に行ってください。内臓を取り出したら、腹の中の血合いを流水でしっかり洗い流します。
5.血合いを洗う
背骨に沿って残る血合いは、歯ブラシや指を使って丁寧に取り除きます。血合いが残ると臭みや苦味の原因になるため、しっかり洗い流すことが大切です。洗い終わったらキッチンペーパーで全体の水気を丁寧に拭き取ります。
6.三枚おろしにする
いよいよ三枚おろしです。まな板に魚を置き、頭側を左・腹側を手前にします。背側から中骨に沿って包丁を入れ、尾まで切り進めます。次に腹側からも同様に包丁を入れ、中骨から身を切り離します。反対側も同じように行い、三枚におろします。
チカメキントキは身が厚いため、包丁を中骨にしっかり沿わせることが大切です。中骨から離れて身の中に包丁が入ると、骨に身が多く残ってしまいます。包丁を寝かせ気味にして、中骨を感じながらゆっくり切り進めるのがコツです。
7.腹骨をすく
三枚おろしにした身から腹骨をすき取ります。包丁を腹骨に沿わせて、薄くすくい取るように切り離します。チカメキントキの腹骨は比較的しっかりしているため、包丁をしっかり骨に当てながら作業します。
8.皮を引く
刺身にする場合は皮を引きます。尾側の皮を少し切り、皮と身の間に包丁を差し込んで、皮を左手でつまみながら包丁を前後に動かして皮を引きます。チカメキントキの皮はしっかりしているため比較的引きやすい部類ですが、力を入れすぎると身が崩れるので注意してください。
【捌いた後の活用法】
三枚おろしにしたチカメキントキは、刺身・塩焼き・煮付け・ムニエルなど幅広い料理に使えます。頭や中骨は捨てずに潮汁や味噌汁の出汁に活用してください。チカメキントキのアラから出る出汁は上品で旨みが豊かです。
【まとめ】
チカメキントキは硬いうろこと鋭いひれへの対処さえしっかり行えば、あとは基本の手順で美しく捌くことができます。うろこはシンクの中でしっかり取り除き、ひれはあらかじめハサミでカットしておくことが安全に作業するための第一歩です。頭を落とすときは出刃包丁で思い切りよく一気に切り落とし、三枚おろしは中骨に包丁をしっかり沿わせながら丁寧に進めることが身を無駄なく使い切るコツです。市場でなかなか出会えない魚だからこそ、手に入ったときは丁寧に捌いて最後まで美味しくいただきましょう。
魚の捌き方はおととチャンネルで解説しています。
https://youtube.com/channel/UCKgZWNzDVFenWKZGgvUjO6A
チカメキントキの捌き方|固いうろこの取り方から三枚おろしまで魚屋が丁寧に解説
捌き方