アブラボウズの基礎知識|旬・産地・選び方を魚屋が解説

アブラボウズという魚の名前を聞いたことはあっても、実際にどんな魚なのかを詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか。深海に生息する大型魚で、その濃厚な脂と上品な旨味から高級食材として扱われることが多い魚です。近年では通販や鮮魚店で手に入る機会も増えており、じわじわと注目を集めています。今回は魚屋歴20年以上の岸田が、アブラボウズの旬・産地・選び方といった基礎知識を丁寧に解説していきます。この記事を読めばアブラボウズのことがぐっと身近に感じられるはずです。
【アブラボウズとはどんな魚か】
アブラボウズはアブラボウズ科アブラボウズ属に分類される深海魚です。学名はErilepis zonaで、英語ではSablefish(セーブルフィッシュ)またはBlack cod(ブラックコッド)と呼ばれることもありますが、日本でいうアブラボウズとは別種であることが多いため注意が必要です。体は黒褐色で大きな頭と分厚い体が特徴的で、大型のものでは体長1mを超え、体重が20〜30kgに達する個体も珍しくありません。
アブラボウズの最大の特徴はその圧倒的な脂の量です。身に含まれる脂質は非常に多く、加熱するととろけるような食感が生まれます。ただしこの脂の多くはワックスエステルと呼ばれる成分で、人間の消化酵素では分解されにくい性質を持っています。このため食べすぎると消化不良を起こすことがあり、適量を守って食べることが大切です。西京焼きや塩焼きにして脂を適度に落とすことで、安心して美味しく楽しめます。
見た目はやや無骨でインパクトがありますが、その身は白くて上品な旨味を持っており、料亭や高級寿司店では古くから珍重されてきた食材です。深海魚特有の神秘的な雰囲気も相まって、食卓に並ぶと話題になる魚のひとつです。
【アブラボウズの旬はいつか】
アブラボウズの旬は秋から冬にかけての時期とされています。特に10月から2月ごろにかけて脂がよくのり、身の旨味も増すとされています。深海魚であるため季節による変動は比較的少ない魚ですが、寒い時期のアブラボウズは特に脂の乗りがよく、西京焼きや塩焼きにしたときの美味しさが際立ちます。
漁獲量自体は年間を通じて安定しているため、旬の時期以外でも品質が大きく落ちるわけではありません。ただし旬の時期に手に入るアブラボウズはとくに脂がのっているため、西京焼きや照り焼きなど脂の旨味を活かした料理に向いています。通販などで購入する場合は秋から冬にかけての時期を狙うとより美味しいアブラボウズに出会える可能性が高くなります。
【アブラボウズの主な産地】
アブラボウズは北太平洋の深海に広く分布しており、日本近海では主に北海道・東北地方の太平洋側・三陸沖などで漁獲されています。水深200〜1000m程度の深い海に生息しているため、底引き網や延縄(はえなわ)漁法によって漁獲されることが多い魚です。
国内での漁獲量はそれほど多くなく、希少性が高いことも高級魚として扱われる理由のひとつです。一方で北米のアラスカやカナダ沖でも同属の魚が多く漁獲されており、輸入品として国内に流通しているものも少なくありません。国産のアブラボウズは流通量が少なく値段も高めですが、鮮度と品質の面では非常に優れています。輸入品は冷凍で流通することが多く、通販などで比較的手頃な価格で入手できることがあります。
地域によってはアブラボウズを「オロチ」「クロボウズ」などの地方名で呼ぶこともあります。漁港の直売所や地方の鮮魚店では地方名で販売されていることもあるので、見かけた際は確認してみてください。
【アブラボウズの選び方・新鮮なものの見分け方】
鮮魚店や漁港の直売所でアブラボウズを選ぶ際には、いくつかのポイントを確認するようにしましょう。切り身で販売されていることが多いアブラボウズの場合、まず身の色を確認してください。新鮮なアブラボウズの身は白くてツヤがあり、脂がしっかりと乗っているものは半透明に近い輝きがあります。身の色がくすんでいたり、黄みがかっていたりするものは鮮度が落ちている可能性があります。
切り身の断面もチェックポイントです。新鮮なものは断面がきれいで水分が適度に保たれており、ドリップ(汁)が大量に出ていないものを選びましょう。トレーの中にドリップが多く溜まっているものは鮮度が落ちているサインです。
においも重要な判断基準です。新鮮なアブラボウズは磯の香りや海の爽やかなにおいがします。酸っぱいにおいや強い生臭さがあるものは避けてください。アブラボウズは脂が多いため、鮮度が落ちると脂が酸化して独特の嫌なにおいが出やすくなります。においには特に敏感にチェックするようにしてください。
丸のままのアブラボウズを選ぶ機会はなかなかありませんが、もし丸魚で選ぶ場合は目の透明感・えらの色・体のツヤと弾力を確認するという基本の見分け方を参考にしてください。
【アブラボウズの栄養と健康効果】
アブラボウズは脂質が非常に多い魚ですが、その中にはDHAやEPAといった不飽和脂肪酸も含まれています。DHAは脳の健康維持や認知機能のサポートに、EPAは血液をさらさらに保つ効果が期待されています。ただし前述の通りワックスエステルも多く含まれているため、食べすぎには注意が必要です。
タンパク質も豊富に含まれており、良質なアミノ酸を摂取できる食材でもあります。ビタミンDやビタミンB群なども含まれており、栄養面では非常に優秀な魚といえます。適量を守って食べることを前提にすれば、健康維持に役立つ食材として積極的に取り入れることができます。
【アブラボウズにまつわる豆知識】
アブラボウズはその希少性と濃厚な旨味から、一部の地域では「深海の黒いダイヤ」とも呼ばれることがあります。脂の乗り方がトロに例えられることもあり、魚好きの間では非常に人気の高い魚です。料亭では西京焼きとして供されることが多く、その上品な味わいは一度食べると忘れられないという方も多くいます。
また、アブラボウズは非常に長寿な魚としても知られており、大型の個体は数十年生きることもあるとされています。深海という過酷な環境で長い年月をかけて育った魚だからこそ、あの濃厚な旨味と脂が生まれるのかもしれません。深海魚という神秘的な背景を知りながら食べると、また一層味わい深く感じられるものです。
【まとめ】
アブラボウズはアブラボウズ科に属する深海魚で、北海道・東北地方の太平洋側などが主な産地です。旬は秋から冬にかけてで、この時期のアブラボウズは特に脂がよくのり美味しさが際立ちます。選ぶ際は身の色とツヤ・断面のドリップの有無・においを確認するのがポイントです。ワックスエステルを多く含む脂が特徴的で、食べすぎには注意が必要ですが、適量を守って西京焼きや塩焼きなど脂が落ちる調理法で楽しめば、とろけるような食感と濃厚な旨味を堪能できる非常に魅力的な魚です。希少性が高く手に入れる機会は限られていますが、見かけた際にはぜひ挑戦してみてください。
おととチャンネルではアブラボウズの捌き方を動画で解説しています。ぜひ動画と一緒に確認してみてください。
https://youtube.com/channel/UCKgZWNzDVFenWKZGgvUjO6A

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