魚屋の店頭にキチジを並べると、「キンキってどんな魚なの?」と興味津々に聞いてくるお客さんが必ずいます。テレビや雑誌で「高級魚」として取り上げられることが多いキンキですが、どんな魚なのか詳しく知っている方は意外と少ないものです。今回はキチジの名前の由来・旬・産地・栄養など、知っておくと魚選びがぐっと楽しくなる基礎知識をまとめて解説します。
【キチジとキンキ、名前の違いはなぜ?】
キチジの話をするとき、まず多くの方が疑問に思うのが「キチジとキンキ、どちらが正しいの?」という点です。正式な和名はキチジですが、北海道・東北地方では古くから「キンキ」という呼び名で親しまれてきました。市場や飲食店でも「キンキ」の名前で流通することがほとんどで、メニューに「キンキの煮付け」と書かれていることが多いです。
キンキという呼び名の由来については諸説ありますが、体色の金色がかったオレンジ色から来ているという説が有力とされています。キチジという正式名称よりもキンキという呼び名の方が全国的に広く知られているという、少し珍しい魚のひとつです。
【キチジはどんな魚?】
キチジはカサゴ目フサカサゴ科に分類される深海魚です。体色は鮮やかなオレンジ色から赤色で、丸みのある体型と大きな目が特徴的です。生息域は水深200〜800メートルほどの深い海で、北太平洋の冷たい海域に広く分布しています。
成魚の体長は30〜40センチ程度が一般的ですが、成長が非常に遅い魚として知られています。30センチになるまでに10年以上かかるとされており、これが希少性と高値の一因になっています。漁獲量が限られているため市場に出回る量も多くなく、入荷があると魚屋の店頭でも目立つ存在になります。
【旬の時期】
キチジの旬は冬から春にかけて、11月から3月頃が最も脂がのって美味しい時期とされています。寒い海域に生息するキチジは水温が下がる冬場に向けて脂を蓄えるため、この時期の身は特に豊かな旨みと脂を持ちます。
市場でも冬場になるとキチジの入荷が増える印象があります。真冬の極寒の中で仕入れ作業をしながら、脂ののったキチジが並んでいるのを見ると、思わず「今日は良いものが入った」と気持ちが上がります。旬の時期に手に入れたキチジは、煮付けやしゃぶしゃぶにすると脂の豊かさが存分に楽しめます。
【主な産地】
キチジの主な産地は北海道・青森・岩手・宮城などの北日本の太平洋側です。中でも北海道産と三陸産のものが有名で、市場でも高値がつきやすい産地として知られています。
漁法は主に底引き網漁や延縄漁で、深海に生息するキチジを狙って漁が行われます。深い海から引き上げられるため、水揚げの際に水圧の変化で目が飛び出したような状態になることがあります。これはキチジに限らず深海魚全般に見られる現象で、品質には全く問題ありません。市場でキチジを見かけたときに目が大きく見えるのはこのためです。
【価格が高い理由】
キチジが高級魚とされる理由はいくつかあります。まず成長が非常に遅いこと。先述の通り30センチになるまでに10年以上かかるため、資源量が限られています。次に深海に生息するため漁獲に手間とコストがかかること。そして脂のりと旨みのバランスが他の魚と比べて際立って優れていることが、高い評価と価格につながっています。
市場での仕入れでも、キチジは値段の交渉が難しい魚のひとつです。問屋さんとの長年の付き合いの中で信頼関係を築いてきたからこそ、良いキチジが入ったときに優先して取り置きしてもらえることがあります。そういった場面でこそ、長年市場に通い続けてきた積み重ねが活きてくると感じます。
【栄養成分と健康効果】
キチジは脂質が非常に豊富な魚で、その脂にはDHAやEPAが多く含まれています。DHAは脳の働きをサポートし、EPAは血液をサラサラにする効果が期待できます。脂が多い魚というと敬遠する方もいますが、魚の脂は体に良い不飽和脂肪酸が主体であるため、積極的に摂取したい栄養素です。
また良質なタンパク質も豊富で、筋肉の維持や体の回復を助ける食材としても優れています。ビタミンB群やビタミンDも含まれており、免疫機能の維持や骨の健康にも貢献します。カロリーはやや高めですが、それだけ栄養が凝縮された魚といえます。
【釣りの対象魚として】
キチジは深海魚であるため、船釣りで狙うことが一般的です。北海道や三陸沿岸では専門の遊漁船が出ており、深海釣りの対象として人気があります。深い海から引き上げる手応えと、釣れたときの鮮やかなオレンジ色の姿が釣り人を魅了します。釣ったキチジをその場で締めて持ち帰ると、市場に出回るものとは比べ物にならないほど鮮度の高いものが楽しめます。
【まとめ】
キチジは成長が遅く漁獲量が限られているため高値がつく高級魚ですが、その価格に見合った圧倒的な旨みと脂のりを持つ魚です。旬は冬から春にかけてで、この時期に手に入れたものは煮付け・塩焼き・しゃぶしゃぶとどの料理にしても絶品の仕上がりになります。北海道や三陸産のものが特に有名で、市場でも入荷があると注目を集める存在です。見かける機会があればぜひ手に取ってみてください。
魚の捌き方はおととチャンネルで解説しています。
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