魚屋の店頭にナマコを並べると、「これ食べられるの?」と興味津々に覗き込むお客さんがいる一方で、見た目だけで敬遠してしまう方も少なくありません。独特の見た目と食感から好き嫌いが分かれる食材ですが、古くから日本の食文化に深く根付いた歴史ある珍味です。今回はナマコの種類・旬・産地・栄養など、知っておくと面白い基礎知識をまとめて解説します。
【ナマコはどんな生き物?】
ナマコは棘皮動物門ナマコ綱に属する海の無脊椎動物で、ウニやヒトデと同じ仲間です。魚ではなく、脊椎骨を持たない生き物です。体は筒状で表面にイボが並んでおり、危険を感じると体を縮めて硬くなる性質があります。また外敵に襲われると内臓を体外に放出して身を守るという独特の防衛行動をとることでも知られています。放出した内臓は再生されるため、この行動をとっても命に関わることはありません。
日本近海には約200種のナマコが生息しているとされていますが、食用として流通しているのは主にマナマコです。英語ではシー・キュウカンバー(Sea Cucumber)と呼ばれており、見た目がキュウリに似ていることが名前の由来です。
【マナマコの三色の違い】
食用として最も一般的なマナマコには赤・青・黒の三色があり、それぞれ味や食感に違いがあります。
赤ナマコは岩礁地帯に生息しており、身が柔らかく旨みが強いとされています。市場での評価が最も高く、三色の中で最も高値がつきます。青ナマコは砂地に生息しており、赤ナマコより身が硬めで磯の香りが強い特徴があります。黒ナマコは主に加工用として使われることが多く、干しナマコの原料として中国などへ輸出されることもあります。
魚屋の店頭では赤ナマコと青ナマコが並ぶことが多いですが、赤ナマコの方が人気が高く、入荷するとすぐに売り切れてしまうことがよくあります。
【旬の時期】
ナマコの旬は冬から春にかけて、11月から3月頃が最も美味しい時期とされています。水温が下がる冬場に身が締まってコリコリとした食感が増し、旨みも凝縮されます。夏場のナマコは身が柔らかくなりすぎて食感が落ちるため、旬の時期に比べると味が劣ります。
冬の市場ではナマコが豊富に出回り、価格も比較的手頃になります。真冬の極寒の中での仕入れ作業は体にこたえますが、旬のナマコが山積みになっている光景を見ると気持ちが引き締まります。冬場だけの楽しみとして、ぜひ旬の時期に味わってみてください。
【主な産地】
ナマコの主な産地は北海道・青森・岩手・宮城・石川・長崎などです。中でも北海道産と三陸産のものが品質が高いとされており、市場でも高値がつきやすい産地として知られています。石川県能登地方のナマコも古くから有名で、このわたの産地としても名高いです。
中国では干しナマコが高級食材として非常に高値で取引されており、日本産の干しナマコは中国への輸出品として重要な水産物のひとつになっています。近年は国内での需要も高まっており、養殖の研究も進んでいます。
【このわたと日本三大珍味】
ナマコの内臓(腸)を塩漬けにして熟成させたものがこのわたで、越前のウニ・土佐の酒盗と並んで日本三大珍味のひとつに数えられています。少量でも濃厚な磯の旨みがあり、古くから高級食材として珍重されてきました。
このわたの産地として特に有名なのが愛知県三河地方で、「三河のこのわた」は全国的に知られたブランド品です。良質なナマコをふんだんに使って丁寧に作られるこのわたは、市販品では小瓶一つが数千円から数万円する高級品です。自分でナマコを捌いて手作りすれば、この日本三大珍味を比較的手頃に楽しめるのも、ナマコを捌く大きな魅力のひとつです。
【栄養成分と健康効果】
ナマコは低カロリー・低脂肪・低糖質でありながら、さまざまな栄養素を含む優れた食材です。タンパク質・カルシウム・鉄分・亜鉛などのミネラルが豊富に含まれており、骨の健康維持や貧血予防に役立ちます。
ナマコに特有の成分としてホロスリンとトリパンという物質が含まれており、抗菌・抗腫瘍作用があるとして研究が進んでいます。またコンドロイチン硫酸も豊富に含まれており、関節の健康維持や肌の潤いを保つ効果が期待できます。コリコリとした食感の正体はこのコンドロイチン硫酸によるものです。
健康のために毎日買い物に来る年配のお客さんが「ナマコは体に良いから毎年楽しみにしている」とおっしゃっていましたが、実際にナマコには健康維持に役立つ成分が豊富に含まれています。見た目で敬遠せずにぜひ積極的に取り入れてみてください。
【ナマコの文化的な背景】
ナマコは日本で非常に古くから食べられてきた食材で、奈良時代の文献にもナマコに関する記述が残っています。干しナマコは江戸時代に中国への重要な輸出品のひとつとして長崎を通じて盛んに取引されており、当時から高値がつく貴重な食材として知られていました。
また俳句の世界では「海鼠(なまこ)」が冬の季語として使われており、松尾芭蕉をはじめ多くの俳人がナマコを詠んだ句を残しています。食材としてだけでなく、日本の文化や歴史とも深く結びついた興味深い生き物です。
【まとめ】
ナマコはウニやヒトデと同じ棘皮動物の仲間で、マナマコには赤・青・黒の三色があります。旬は11月から3月の冬場で、この時期の身はコリコリとした食感と濃厚な旨みが楽しめます。内臓から作るこのわたは日本三大珍味のひとつとして古くから珍重されてきた高級食材です。低カロリーでコンドロイチン硫酸が豊富な健康食材でもあるため、見た目で敬遠せずにぜひ一度挑戦してみてください。
魚の捌き方はおととチャンネルで解説しています。
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ナマコの基礎知識|種類・旬・産地・栄養・このわたまで魚屋が解説
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