魚の「活け締め」と「野締め」どっちが美味しい?

【魚の締め方で味が変わる】
魚を買うとき、「活け締め」という言葉を見たことはありますか?鮮魚店や魚市場では当たり前のように使われる言葉ですが、一般の方にはあまり馴染みがないかもしれません。
実は魚は、死んだ後の処理の仕方によって味が大きく変わります。同じ種類の魚でも、締め方が違うだけで刺身にしたときの食感や旨味が全然違うのです。魚屋として長年働いていると、この違いを日々実感しています。
今回は「活け締め」と「野締め」の違い、そしてどちらが美味しいのかについて、魚屋目線でわかりやすく解説します。
【野締めとは何か】
野締め(のじめ)とは、魚を締めずに自然に死なせることです。網で大量に漁獲した魚は、船の上で酸素不足や圧迫によって自然に死んでいきます。これが野締めです。
野締めの魚は漁獲量が多い場合に多く見られます。イワシやサバなどの大量漁獲される青魚はほとんどが野締めです。市場に大量に流通している魚の多くは野締めと考えてよいでしょう。
野締めの場合、魚は死ぬまでの間に激しくもがいてストレスがかかります。このストレスによって筋肉中のエネルギー源であるグリコーゲンが消費されてしまい、旨味成分であるイノシン酸の生成量が減ってしまいます。また、死後硬直が早く始まるため、鮮度の低下も早くなる傾向があります。
【活け締めとは何か】
活け締め(いけじめ)とは、魚が生きているうちに素早く締めて即死させる方法です。魚を苦しませずに一瞬で死なせることで、ストレスによるグリコーゲンの消費を最小限に抑えられます。
活け締めの方法にはいくつかの種類があります。
脳締め
魚の脳に直接ピックを刺して即死させる方法です。魚が一瞬で動かなくなるため、ストレスが最も少ない締め方です。釣り人の間でも広く行われており、釣った魚をその場で締めるときによく使われます。
神経締め
脳締めをした後、さらに背骨の神経穴にワイヤーを通して神経を破壊する方法です。死後も神経が働き続けることで起こる死後硬直を遅らせる効果があります。高級魚や長距離輸送が必要な魚に使われることが多い方法です。
血抜き
締めた後にエラや尾を切って海水や水に浸け、血を抜く処理です。血が体内に残ると臭みや腐敗の原因になるため、活け締めとセットで行われることがほとんどです。
【活け締めと野締めの味の違い】
結論から言うと、活け締めの方が美味しいと言えます。ただし、それには理由があります。
活け締めをした魚はグリコーゲンがしっかり残っているため、死後にイノシン酸がたっぷり生成されます。イノシン酸は魚の旨味の主成分なので、活け締めの魚は旨味が強くなるのです。
また、血抜きをしっかり行うことで臭みが少なくなり、刺身にしたときの透明感や美しい色が保たれます。活け締めの刺身は見た目にも美しく、食感もしっかりしているのが特徴です。
一方の野締めは旨味が少なく、臭みが出やすい傾向があります。ただし、野締めでも鮮度が高ければ十分に美味しく食べられます。加熱調理の場合は活け締めと野締めの差はさほど気にならないことも多いです。
【死後硬直と熟成の関係】
魚の美味しさを語るうえで「死後硬直」と「熟成」の話は欠かせません。
魚は死後しばらくすると死後硬直が起き、身が固くなります。この状態はまだ旨味成分が最大になっていないため、実は刺身として食べるには少し早い状態です。
その後、硬直が解けていく「解硬」という段階に入ります。このときに旨味成分であるイノシン酸がピークに達します。魚の種類によって違いますが、この解硬のタイミングが最も美味しい食べごろです。
活け締めをした魚は死後硬直が始まるまでの時間が長いため、この熟成期間をコントロールしやすくなります。料理人が「何日寝かせた魚」と言うのはこの熟成を意識しているからです。
【スーパーの魚はどっち?】
一般的にスーパーで売られている魚の多くは野締めです。大量漁獲・大量流通の中では、一匹ずつ丁寧に活け締めするのは難しいのが現実です。
ただし、鮮魚専門店や産地直送の魚、高級スーパーでは活け締めの魚が手に入ることもあります。「活け締め」と表示されている魚は、それだけ手間がかかっている証拠なので、値段が高めでも納得の品質です。
魚屋では仕入れのときに締め方を確認することもあります。お客さんに「どうやって締めた魚ですか?」と聞かれることもあり、産地や漁師さんとのつながりが大切だと日々感じています。
【魚屋から一言】
活け締めか野締めかは、魚を美味しく食べるうえで大切な知識です。ただ、家庭で魚を楽しむ場合は締め方よりも鮮度の方が重要なことも多いです。どんなに上手に活け締めされた魚でも、時間が経てば鮮度は落ちます。
一番大切なのは、新鮮な魚を選んで早めに食べること。そして刺身で食べるなら活け締めの魚を選ぶと、その違いをはっきり実感できると思います。
ぜひ次に魚を買うときは、締め方にも注目してみてください。魚を選ぶ楽しさがさらに広がりますよ。
捌き方の基本はおととチャンネルで解説しています。ぜひチャンネルも覗いてみてください!
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