魚と塩の関係を魚屋が解説

魚料理には必ずといっていいほど塩が登場します。塩焼き・塩締め・塩水解凍・振り塩など、塩はさまざまな場面で使われますが、なぜ魚料理にこれほど塩が使われるのか、きちんと理由を知っている人は意外と少ないものです。今回は魚屋として長年魚と向き合ってきた経験をもとに、魚と塩の関係をわかりやすく解説します。
【塩が魚に与える効果は大きく3つ】
塩が魚に与える効果は主に3つあります。この3つを理解しておくだけで、日々の魚料理がぐっと上手になります。
① 臭みを取る効果
魚に塩を振ると、浸透圧の働きによって魚の内部から水分が出てきます。この水分には魚の臭みの原因となる成分が含まれています。出てきた水分をキッチンペーパーでしっかり拭き取ることで、臭みを効果的に取り除くことができます。
魚料理の下処理で「塩を振って10分置く」というのはこのためです。たったこれだけの工程ですが、仕上がりの味に大きな差が出ます。魚屋でも必ずやっている基本中の基本です。
② 身を引き締める効果
塩を振ることで魚の身がキュッと引き締まります。これは塩の浸透圧によって余分な水分が抜けるためです。身が締まることで焼いたときに崩れにくくなり、刺身にするときも切りやすくなります。
特に水分が多い魚や、柔らかい身の魚に塩を振って締めることは非常に重要です。塩締めをしっかりやった魚とやっていない魚では、食感がまったく違います。
③ 保存性を高める効果
塩には食品の保存性を高める効果があります。塩が魚の水分を抜くことで雑菌が繁殖しにくくなり、日持ちが長くなります。干物や塩漬けが昔から保存食として使われてきたのはこのためです。
冷蔵庫のない時代から、人々は塩を使って魚を保存してきました。塩は魚と人間の長い歴史の中で欠かせない存在だったわけです。
【振り塩と立て塩の違い】
塩の使い方には「振り塩」と「立て塩」の2種類があります。それぞれの特徴を知っておくと料理の幅が広がります。
振り塩
魚の表面に直接塩を振る方法です。塩焼きや下処理のときに使います。高い位置から振ると均一に塩が行き渡りやすくなります。手で直接つかんで振るよりも、指でつまんで少し高い位置からパラパラと振るのがコツです。
立て塩
水に塩を溶かして作る塩水に魚を浸ける方法です。濃度は海水程度(約3%)が目安で、水1リットルに対して塩30gが基本です。魚全体に均一に塩味を入れたいときや、デリケートな魚を傷めずに処理したいときに使います。
白身魚の刺身を作る前に立て塩に浸けると、身が締まって旨味が増します。魚屋でもよく使う技です。
【塩加減の目安を知っておこう】
塩加減は魚料理で最も難しいポイントのひとつです。目安を知っておくと失敗が減ります。
塩焼きの場合
魚の重さに対して1〜1.5%が基本です。切り身1切れ(約100g)であれば塩1〜1.5gが目安になります。薄く均一に振ることを意識してください。
塩焼きは焼く直前に塩を振るのではなく、焼く15〜20分前に振って置いておくのが美味しく仕上げるコツです。塩を振って出てきた水分を拭き取ってから焼くと、臭みが取れてパリッと仕上がります。
下処理の場合
臭みを取るための下処理であれば、やや多めに振って構いません。出てきた水分と一緒に臭みも流れ出るので、しっかり拭き取ることが大切です。
塩締めの場合
刺身にする魚を塩締めする場合は、魚の表面全体に均一に塩を振り、ラップをして冷蔵庫で30分〜1時間置きます。その後、水で軽く洗い流してからキッチンペーパーで水分を拭き取ります。昆布締めと組み合わせるとさらに旨味が増します。
【塩を使った魚料理の種類】
塩を使った魚料理は実にさまざまあります。代表的なものをまとめておきます。
塩焼き
最もシンプルな魚料理のひとつ。魚本来の旨味を引き出す調理法です。サンマ・アジ・鮭・サバなどどんな魚にも向いています。
塩締め
刺身にする前に塩を振って身を締める方法。水分が抜けて旨味が凝縮されます。
塩漬け・塩蔵
魚を大量の塩で漬け込む保存方法。塩鮭・塩サバ・イクラの塩漬けなどが代表例です。
一夜干し・干物
塩水(立て塩)に浸けてから干す方法。水分が抜けて旨味が凝縮された保存食です。
塩水解凍
冷凍魚を塩水で解凍する方法。真水より早く解凍でき、ドリップも出にくくなります。
【塩の種類で味が変わる?】
一口に塩といっても種類はいろいろあります。精製塩・天然塩・岩塩・藻塩など、塩によって風味や粒の大きさが異なります。
魚料理には粒が細かくて溶けやすい精製塩が扱いやすく、下処理には向いています。一方で仕上げや食卓で使う塩には、ミネラル分を含んだ天然塩や藻塩を使うと風味が増して美味しくなります。
藻塩は海藻のエキスが含まれていて、魚との相性が特によいと言われています。魚屋としてもおすすめの塩です。
【まとめ】
塩は魚料理において単なる調味料ではなく、臭みを取り、身を締め、保存性を高めるという重要な役割を持っています。振り塩と立て塩の違いや塩加減の目安を知っておくだけで、魚料理の仕上がりがぐっとよくなります。
毎日の魚料理に塩をうまく活用して、より美味しい一皿を作ってみてください。
捌き方はおととチャンネルで解説しています。
https://youtube.com/channel/UCKgZWNzDVFenWKZGgvUjO6A

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