魚屋をやっていると、ナマコを手に取ったお客さんが「これどうやって食べるの?」と困った顔をすることがよくあります。見た目のインパクトが強く、どこから手をつければいいのか分からないという方が多いのですが、捌き方さえ覚えてしまえばそれほど難しい食材ではありません。コリコリとした独特の食感と磯の香りは、日本酒との相性が抜群で、冬の珍味として古くから親しまれてきました。今回はナマコの下処理から捌き方、このわたの取り出し方まで順番に解説します。
【ナマコとはどんな食材?】
ナマコは棘皮動物門ナマコ綱に属する生き物で、魚ではなく海の無脊椎動物です。日本近海には多くの種類が生息していますが、食用として一般的に流通しているのは主にマナマコです。マナマコには赤・青・黒の三色があり、赤ナマコは身が柔らかく味が良いとされ高値がつくことが多いです。青ナマコは赤より硬めで磯の香りが強く、黒ナマコは主に加工用として使われることが多いです。
ナマコは古くから日本の食文化に深く根付いており、このわた(内臓の塩辛)・このこ(卵巣の干物)・干しナマコなどに加工されてきました。特にこのわたは「越前のウニ・三河のこのわた・土佐の酒盗」と並んで日本三大珍味のひとつに数えられる高級食材です。
【必要な道具を揃える】
ナマコを捌くために用意するものは、出刃包丁・まな板・キッチンペーパー・塩の4点です。ナマコは表面がぬめっているため、まな板の上で動かないよう塩をふって落ち着かせてから作業を始めると扱いやすくなります。
【塩で下処理をする】
ナマコはそのまま切ろうとすると表面のぬめりで包丁が滑りやすく、また体が縮んで切りにくい状態になっています。まずまな板の上にナマコを置き、表面全体に塩をまぶして手で軽く揉みます。するとナマコが徐々に柔らかくなり、ぬめりが取れてきます。5分ほど置いてから流水でよく洗い流してください。
この塩もみの工程でナマコの体がやや縮みますが、切り開いてみると中はしっかりとした身が詰まっています。魚屋でナマコを扱うとき、この塩もみの加減が仕上がりの食感に直結することを長年の経験で実感しています。もみすぎると身が締まりすぎてしまうため、表面のぬめりが取れる程度で十分です。
【口と肛門を切り落とす】
塩もみを終えたナマコの両端を確認します。片方の端に口があり、もう片方に肛門があります。口側は少し硬くなっていてわかりやすく、肛門側は少し窪んでいます。両端をそれぞれ1センチほど切り落とします。
【縦に切り開く】
両端を切り落としたら、腹側(平らな面)から縦に一直線に切り開きます。ナマコの腹側は表面が比較的平らで、背側はイボが多く並んでいます。腹側から包丁を入れて縦に切り開くと、中から内臓が現れます。
【内臓を取り出す】
切り開いたナマコの中には細長い腸・白いふわふわした呼吸器(樹状肺)・卵巣などが入っています。これらをまとめて取り出します。腸はこのわた(塩辛)の原料になるため、破らないよう丁寧に取り出してください。腸以外の部分は取り除いて構いません。
腸を取り出したら流水でさっと洗い、別の容器にとっておきます。このわたを作る場合は後ほど塩漬けにします。
【身を切り分ける】
内臓を取り出したナマコの身を流水でよく洗い、表面の汚れをきれいに落とします。洗い終えたらペーパーで水気を拭き取り、食べやすい大きさに切り分けます。酢の物にする場合は5ミリ程度の薄切りにするのが一般的です。切り分けた身はそのまま酢の物や刺身として食べられます。
【このわたの作り方】
取り出した腸に塩をまぶし、清潔な保存容器に入れて冷蔵庫で1週間ほど漬け込みます。途中で一度混ぜると全体に塩がなじみます。1週間後には独特の磯の香りと濃厚な旨みを持つこのわたが完成します。少量をご飯に乗せたり日本酒の肴にしたりすると絶品です。
日本三大珍味のひとつであるこのわたは、市販品では高値がつく食材ですが、ナマコを自分で捌けば手作りすることができます。手間はかかりますが、自分で作ったこのわたの美味しさは格別です。
【まとめ】
ナマコの捌き方のポイントは、塩もみでぬめりを取ってから作業を進めること、内臓を丁寧に取り出すことの二点です。見た目のインパクトに圧倒されがちですが、手順を覚えてしまえば意外とシンプルな食材です。コリコリとした食感の身は酢の物に、取り出した腸はこのわたにと、余すところなく楽しめます。冬場に見かけた際はぜひ挑戦してみてください。
魚の捌き方はおととチャンネルで解説しています。
https://youtube.com/channel/UCKgZWNzDVFenWKZGgvUjO6A
ナマコの捌き方|下処理から腸(このわた)の取り出し方まで丁寧に解説
捌き方