魚の粕漬けの作り方

【粕漬けとはどんな料理か】
粕漬け(かすづけ)とは、酒粕に魚を漬け込んで旨味を染み込ませる日本の伝統的な保存・調理技法です。西京漬けと並んで魚の漬け込み料理の定番として知られており、鮮魚店や料亭でも広く作られています。
酒粕に漬け込むことで魚の余分な水分が抜けて身が引き締まり、同時に酒粕の旨味とほのかな甘みが魚に染み込みます。焼き上げたときの香ばしい風味と、しっとりとした身の食感は粕漬けならではの美味しさです。
魚屋として長年働いていると、「粕漬けって自宅でも作れるんですか?」と聞かれることがよくあります。料亭や鮮魚店で売られているイメージが強くて難しそうに思われがちですが、実はとてもシンプルな作業です。漬け込む時間さえ確保できれば誰でも自宅で本格的な粕漬けが作れます。今回は魚屋目線で粕漬けの基本的な作り方からコツまで丁寧に解説します。
【粕漬けに合う魚の選び方】
粕漬けはどんな魚でも作れますが、特に相性の良い魚があります。
サワラ
粕漬けの王道食材といえばサワラです。淡白な白身に酒粕の旨味が加わることで上品で深みのある味わいになります。身が柔らかくてふっくらと焼き上がるため、粕漬けとの相性が抜群です。
鮭(サーモン)
脂がのった鮭は粕漬けにすると旨味がさらに凝縮されます。鮮やかなオレンジ色の身と酒粕の香りが合わさった風味は格別です。切り身が手に入りやすいので家庭でも作りやすい食材です。
タイ(真鯛)
上品な白身のタイは粕漬けにすることで旨味が引き立ちます。焼き上げたときの香ばしさと淡白な旨味のバランスが絶妙です。
ブリ
脂がのったブリも粕漬けにすると絶品です。冬の寒ブリで作る粕漬けは特に旨味が強く、ご飯が何杯でも食べられる一品になります。
タラ
淡白で水分が多いタラは粕漬けにすることで余分な水分が抜けて身が引き締まります。タラ本来の旨味が凝縮されてとても美味しくなります。
【用意するもの】
粕漬けに必要な材料はとてもシンプルです。
・魚の切り身 2〜4切れ
・酒粕 200g
・みりん 大さじ3
・砂糖 大さじ2
・塩 小さじ1
・酒 大さじ2
・ジッパー付き保存袋またはバット
酒粕はスーパーの漬物コーナーや酒類売り場で手に入ります。板粕・バラ粕・練り粕など種類がありますが、家庭で作りやすいのは練り粕またはバラ粕です。板粕の場合は少量の酒やみりんを混ぜて柔らかくしてから使うと扱いやすくなります。
【粕漬けの基本的な作り方】
①魚の下処理をする
魚の切り身に塩を振って15〜20分置きます。塩を振ることで余分な水分と臭みが出てきます。時間が経ったらキッチンペーパーで出てきた水分をしっかり拭き取ってください。この下処理が粕漬けの仕上がりを大きく左右するので丁寧に行いましょう。
水分が残っていると漬け床が水っぽくなって魚に旨味が染み込みにくくなります。キッチンペーパーで念入りに拭き取ることが大切です。
②漬け床を作る
酒粕・みりん・砂糖・塩・酒をよく混ぜ合わせて漬け床を作ります。酒粕が固い場合は電子レンジで30秒程度温めると柔らかくなって混ぜやすくなります。全体が均一になるまでしっかり混ぜてください。
漬け床の甘さは好みで調整して構いません。甘めにしたい場合は砂糖を少し増やし、さっぱりとした仕上がりにしたい場合は砂糖を減らしてみてください。
③魚を漬け込む
ジッパー付き保存袋に漬け床の半量を入れます。その上に魚の切り身を並べて残りの漬け床を魚の上に広げます。魚全体に漬け床がしっかり触れるように丁寧に広げてください。
バットを使う場合は底に漬け床を敷いて魚をのせ、上からさらに漬け床を塗ります。ラップで密封してから冷蔵庫に入れます。
④冷蔵庫で漬け込む
漬け込む時間は魚の種類や好みによって異なります。
短時間(半日〜1日)だと酒粕の風味が軽くついた仕上がりになります。魚本来の味わいを残しつつ酒粕の香りを楽しみたい場合に向いています。
標準(2〜3日)だと酒粕の旨味がしっかり染み込んだ本格的な粕漬けになります。最もバランスの取れた仕上がりで初めて作る場合におすすめです。
長期(4〜7日)だと酒粕の風味が非常に強くなり、保存食としての粕漬けらしい深い味わいになります。日持ちも長くなるので作り置きにも向いています。
⑤焼く前の準備
冷蔵庫から取り出した魚の表面についている漬け床をキッチンペーパーで丁寧に拭き取ります。漬け床が残ったまま焼くと焦げやすくなるので必ず取り除いてください。完全に取り除かなくてもよいですが、表面の大部分は拭き取るようにしましょう。
⑥焼き上げる
魚焼きグリルを中火で熱して魚を並べます。粕漬けは糖分が多いため焦げやすいのが特徴です。弱めの中火でじっくり焼くのがコツで、強火で焼くと表面だけ焦げて中まで火が通らなくなってしまいます。
片面を4〜5分焼いたら裏返してさらに3〜4分焼きます。焼き色がついてきたらアルミホイルをかぶせて焦げを防ぎながら中まで火を通してください。フライパンで焼く場合はクッキングシートを敷いてから焼くとくっつきにくくなります。
【粕漬けを美味しく作るためのコツ】
下処理の水分取りを丁寧に行う
魚の水分をしっかり取ることが最も重要です。水分が残っていると漬け床が薄まって旨味が染み込みにくくなります。塩を振った後にキッチンペーパーで丁寧に拭き取ることを徹底してください。
漬け床は均一に塗る
魚全体に漬け床が均一に触れていないと、漬かりムラができてしまいます。特に魚の端や角の部分にも漬け床がしっかり触れるように意識して塗りましょう。
焦げに注意する
粕漬けは糖分が多いため非常に焦げやすい料理です。弱めの中火でじっくり焼くことと、焼き色がついたらアルミホイルをかぶせることを忘れないでください。
使った漬け床は再利用できる
一度使った漬け床は魚の旨味が染み込んでいます。野菜を漬けるぬか床のように継ぎ足して使うことができます。きゅうりや大根を漬けると美味しい粕漬け野菜が楽しめます。
【粕漬けの保存方法】
漬け込んだ状態で冷蔵庫に保存すれば1週間程度保存できます。漬け込む時間が長くなるほど保存性も高まります。焼いた後の粕漬けは冷蔵庫で2〜3日保存できます。
まとめて作って冷凍保存することもできます。漬け込んだ状態でラップに包んでから冷凍すれば1ヶ月程度保存可能です。食べる前日に冷蔵庫に移して解凍してから焼いてください。
【魚屋から一言】
粕漬けは日本人が長年の知恵で作り上げた保存食の傑作です。酒粕の旨味と魚の旨味が組み合わさった深い味わいは、シンプルな調味料だけでは出せない複雑な美味しさがあります。
市販の粕漬けも美味しいですが、自宅で作る粕漬けは漬け込む時間や甘さを自分好みに調整できるのが最大の魅力です。一度作り方を覚えてしまえば様々な魚で応用できます。ぜひ挑戦してみてください。
捌き方の基本はおととチャンネルで解説しています。ぜひチャンネルも覗いてみてください!
https://youtube.com/channel/UCKgZWNzDVFenWKZGgvUjO6A

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