イラは体表のぬめりが強く、下処理を丁寧に行わないと臭みが出やすい魚です。しかし正しい下処理と保存方法を知っておけば、白身の旨味をしっかり保ったまま美味しくいただくことができます。この記事では、魚屋として長年魚と向き合ってきた経験をもとに、イラの下処理と保存方法を丁寧に解説します。
【イラの下処理が大切な理由】
イラはベラ科の魚特有の体表のぬめりが強く、このぬめりが臭みの大きな原因になります。鮮度が落ちるにつれてぬめりからの臭いが身に移りやすくなるため、手に入ったらできるだけ早く下処理を済ませることが最重要ポイントです。
また内臓も早めに取り除くことが大切です。イラは内臓からの臭みが身に移りやすい魚ですので、購入後や釣った後はできるだけその日のうちに内臓を取り出して腹の中をきれいに洗っておくことをおすすめします。下処理さえしっかり行えば、淡白で旨味のある白身を最高の状態で楽しむことができます。
【下処理の手順】
①ぬめりを取る
まず最初にぬめりを取り除く工程から始めます。全体に塩をたっぷりまぶして手でよくこすり、ぬめりを浮き立たせます。流水でしっかり洗い流したらキッチンペーパーで水分を拭き取ります。一度で取りきれない場合は同じ工程をもう一度繰り返してください。このぬめり取りを最初にしっかり行うことが、その後の全ての工程をスムーズにする大切な準備です。
②うろこを取る
ぬめりを取り除いたら、うろこ取りを使って尾から頭に向かってうろこをこそぎ取ります。イラのうろこは比較的大きく取りやすいですが、ひれの際やえらぶたの周辺は残りやすいため丁寧に確認しながら作業してください。うろこが飛び散りやすいため水を流しながら作業するか、シンクの中で行うと周囲が汚れにくくなります。
③内臓を取り出す
腹に切り込みを入れ、内臓を丁寧に取り出します。内臓を傷つけてしまうと臭みが身に移りやすくなるため、慎重に作業することが大切です。取り出した内臓は新聞紙などに包んで袋に入れ、すぐに処分してください。
④腹の中を洗う
内臓を取り除いたら腹の中に残った血合いや汚れを流水でしっかり洗い流します。特に背骨に沿った血合いは臭みの原因になりやすいため、指でこすりながら丁寧に取り除きます。洗い終わったらキッチンペーパーで内側・外側ともに水分をしっかり拭き取ります。水分を残さないことが鮮度を保つ上で非常に重要です。
⑤塩を振る(臭みが気になる場合)
磯の香りや臭みが気になる場合は、下処理後に全体に薄く塩を振って15〜20分置きます。出てきた水分をキッチンペーパーで拭き取ることで余分な臭みが抜けて身が引き締まります。すぐに調理しない場合はこの工程を加えておくと保存中の臭みの広がりを抑えることができます。
【冷蔵保存の方法】
下処理を済ませたイラは、キッチンペーパーで全体の水分をしっかり拭き取ってからラップでぴったりと包みます。さらにジッパー付き保存袋に入れて空気を抜き、チルド室または冷蔵庫の最も冷たい場所で保存してください。この状態で2〜3日を目安に食べきることをおすすめします。
切り身にした状態で保存する場合も同様に、キッチンペーパーで水分を拭き取ってからラップで包み保存袋に入れて冷蔵庫へ。切り身は丸のままより鮮度が落ちやすいため、できれば翌日中に食べるのが理想です。冷蔵保存中は1日1回キッチンペーパーを取り替えることで余分な水分と臭みを取り除き、鮮度をより長く保つことができます。
【冷凍保存の方法】
すぐに食べない場合や量が多い場合は冷凍保存が便利です。三枚おろしにした切り身の状態で冷凍するのが使いやすくおすすめです。
水分をキッチンペーパーでしっかり拭き取った切り身を1切れずつラップでぴったりと包みます。まとめてラップで包むと解凍時に使いにくくなるため、1切れずつ個別に包むことがポイントです。ラップで包んだものをジッパー付き保存袋にまとめて入れ、空気をしっかり抜いてから冷凍庫へ入れます。保存期間は2〜3週間を目安にしてください。
冷凍する際は金属製のトレーの上に置いて急速冷凍すると魚の細胞が壊れにくく、解凍後の食感が保たれます。アルミホイルをトレーとして活用するだけでも効果があります。
【長崎風塩漬けの保存について】
産地で古くから行われてきた塩漬け保存は、冷蔵技術がなかった時代の知恵が詰まった保存方法です。塩漬けにしたイラは切り身の表面に塩がしっかりなじんだ状態でラップに包み、ジッパー付き保存袋に入れて冷蔵庫で保存してください。塩の量が多いほど保存期間が長くなり、しっかり塩をきかせたものは冷蔵庫で4〜5日程度保存が可能です。食べる際に塩が強すぎる場合は焼く前に流水で軽く塩抜きしてから調理してください。現代では冷凍保存が普及していますが、塩漬けにしてから冷凍することでさらに長期保存が可能になります。産地の知恵を現代の保存技術と組み合わせることで、イラを無駄なく美味しくいただくことができます。
【解凍の方法】
冷凍したイラを解凍する際は、冷蔵庫に移してゆっくりと自然解凍するのが最も美味しさを保てる方法です。前日の夜に冷蔵庫に移しておけば翌朝には解凍が完了しています。時間がない場合はジッパー付き保存袋に入れたまま流水にあてて解凍する方法も有効ですが、袋の口がしっかり閉まっていることを確認してから行ってください。電子レンジでの解凍は身が部分的に加熱されてしまうためできるだけ避けることをおすすめします。
【魚屋の現場から】
魚屋では毎朝4時前に起きて市場へ向かい、仕入れた魚をその日のうちに加工して店頭に並べます。魚の鮮度を保つために温度管理は絶対に妥協できません。特に夏場はわずかな時間でも鮮度が落ちるため、市場から店に戻ったらすぐに冷蔵庫へ入れる作業を最優先します。家庭でも同じことが言えて、魚を買って帰ったらすぐに下処理をして冷蔵庫に入れることが鮮度を保つ最大のポイントです。スーパーの袋に入れたまま冷蔵庫に放り込むだけでは鮮度の落ちが早くなります。水分をしっかり拭き取ってラップで包むというひと手間が、翌日の美味しさを大きく左右します。
【まとめ】
イラの下処理で最も大切なのは体表のぬめりを塩でしっかり取り除くことです。このぬめり取りを最初に丁寧に行うことで臭みが大幅に抑えられ、その後の作業もスムーズになります。内臓を早めに取り出して腹の中をしっかり洗い、水分を拭き取って保存することが鮮度を長く保つための基本です。冷蔵保存は2〜3日、冷凍保存は2〜3週間を目安に管理してください。産地で古くから受け継がれてきた塩漬け保存も、現代の冷蔵・冷凍技術と組み合わせることでさらに活用の幅が広がります。丁寧な下処理と保存を心がけることで、イラの白身の旨味を最高の状態で楽しむことができます。
魚の捌き方はおととチャンネルで解説しています。
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保存・下処理