魚屋をやっていると、キチジを手に取ったお客さんから「どうやって食べるのが一番美味しいの?」と聞かれることがあります。キンキという名前で知られるキチジは、その豊かな脂と上品な旨みから、食べ方によって全く異なる表情を見せてくれる魚です。実は魚屋として個人的に特におすすめしたい食べ方がしゃぶしゃぶです。キンキのしゃぶしゃぶは脂が出汁に溶け出して、言葉にならないほどの極上の美味しさになります。今回は煮付け・塩焼き・しゃぶしゃぶの三つを中心に、キチジの美味しさを最大限に引き出す食べ方を解説します。
【キチジの煮付け】
キチジの食べ方として最も定番なのが煮付けです。脂が豊富なキチジは煮付けにすると身がしっとりとして、煮汁と脂が絡み合った濃厚な味わいになります。東北や北海道ではキンキの煮付けは家庭料理の定番として親しまれており、一度食べると忘れられない美味しさです。
材料(二人前)は、キチジの切り身二切れ、醤油大さじ二、みりん大さじ二、酒大さじ三、砂糖小さじ一、水100ミリリットルです。
フライパンか浅い鍋に調味料と水を合わせて火にかけ、煮立ったところにキチジの切り身を皮目を上にして並べます。落とし蓋をして中火で八分ほど煮れば完成です。キチジは脂が多いため、煮ているうちに煮汁に脂がにじみ出てきます。この脂が煮汁に旨みを加えてくれるので、途中で煮汁をスプーンで身にかけながら煮ると、より味が凝縮された仕上がりになります。
【キチジの塩焼き】
シンプルに塩焼きにするだけでも、キチジの美味しさは十分に堪能できます。切り身に塩をふって15分ほど置き、出てきた水分をペーパーで拭き取ってからグリルで焼くだけです。
キチジは脂が多いため、焼いているうちにじわじわと脂が染み出してきます。この脂が皮に焼き色をつけながら香ばしい香りを生み出し、食欲をそそる仕上がりになります。焼き時間は切り身の厚さにもよりますが、中火で片面五分から六分を目安にしてください。大根おろしとすだちを添えると、脂の豊かさをさっぱりと引き立ててくれます。
脂の多い魚は塩をふりすぎると塩辛さが脂に絡んで食べにくくなることがあります。キチジの塩焼きは薄めに塩をあてて、素材の旨みを前面に出すのが魚屋としてのおすすめです。
【キチジのしゃぶしゃぶ】
キチジの食べ方の中で、魚屋として特に声を大にしておすすめしたいのがしゃぶしゃぶです。キンキのしゃぶしゃぶは極上の美味しさで、一度食べると他の魚のしゃぶしゃぶでは物足りなくなってしまうほどです。
作り方はシンプルです。昆布を水に入れて火にかけ、沸騰直前に昆布を取り出して出汁を作ります。キチジの身を薄くそぎ切りにして、熱い出汁にさっとくぐらせて食べます。ポン酢や塩だれで食べるのがおすすめです。
キチジのしゃぶしゃぶが極上である理由は、豊かな脂にあります。薄切りにした身を出汁にくぐらせた瞬間、脂がさっと溶け出して出汁に広がります。その脂が混ざった出汁は回を重ねるごとにどんどん旨みが増していき、最後は雑炊にすると締めとして絶品の一品になります。魚の脂が溶け込んだ出汁で炊いた雑炊は、言葉で表現するのが難しいほどの美味しさです。
しゃぶしゃぶに使う身は、薄く均一にそぎ切りにするのがポイントです。厚すぎると火の通りが遅くなり、薄すぎると食感が失われます。3〜4ミリ程度の厚さに切るのが理想的です。
【キチジのアラ汁】
キチジを捌いた後に残る頭や中骨は、アラ汁にすると別格の美味しさになります。霜降りをしてから鍋に入れ、水から昆布と一緒に火にかけます。沸騰直前に昆布を取り出してアクを取りながら15分ほど煮ると、キチジの脂と旨みが溶け出した濃厚な出汁が取れます。味噌を溶き入れた味噌汁にしても、塩と薄口醤油で整えた潮汁にしても絶品です。
キチジのアラは脂が多いため、出汁の表面に脂の輪が広がります。この脂ごとすすると、市販の出汁では決して出せない深みのある味わいが楽しめます。高級魚のアラを余すところなく使い切るのが、魚屋として大切にしていることのひとつです。
【まとめ】
キチジは煮付け・塩焼き・しゃぶしゃぶとどの食べ方でも豊かな脂と上品な旨みが存分に楽しめる極上の魚です。中でもしゃぶしゃぶは脂が出汁に溶け出して極上の美味しさになるため、ぜひ一度試してみてください。アラも捨てずに活用することで、キチジの美味しさを最後まで余すところなく堪能できます。手に入る機会があればぜひ挑戦してみてください。
捌き方はおととチャンネルで解説しています。
https://youtube.com/channel/UCKgZWNzDVFenWKZGgvUjO6A
キチジ(キンキ)の美味しい食べ方|煮付け・塩焼き・しゃぶしゃぶレシピを魚屋が解説
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