魚の世界には個性的な名前を持つ種類がたくさんいますが、ヒゲダイはその中でも特にインパクトのある名前の魚です。実際に見てみると下顎に髭のような突起があり、名前に納得させられます。似た名前のヒゲソリダイという魚も存在しており、魚の命名センスの豊かさを感じずにはいられません。今回はヒゲダイの生態や旬、産地、栄養など基礎知識をまとめて解説します。
【ヒゲダイの基本情報】
ヒゲダイはスズキ目イサキ科に属する海水魚です。体長は30〜50センチほどのものが多く流通しており、大きいものでは60センチを超えることもあります。体色は銀白色から淡い灰色で、成魚になると体側に不明瞭な縦縞が現れることがあります。
最大の特徴は下顎にある骨質の突起です。この突起が髭のように見えることからヒゲダイという名前がつけられました。若い個体には突起がはっきり見えますが、成長とともに目立たなくなることもあります。地域によってはコロダイに似ているとも言われますが、コロダイは同じイサキ科でも別の種類です。
市場での流通量はそれほど多くなく、産地周辺以外ではあまり見かけない魚のひとつです。知名度は低いながらも白身の旨みが豊かで、食べた人からは高い評価を得ることが多い魚です。
【ヒゲソリダイとの違い】
ヒゲダイと並んでよく話題になるのがヒゲソリダイです。名前が似ているため混同されることもありますが、両者はまったく別の種類の魚です。
ヒゲソリダイはフエフキダイ科に属しており、ヒゲダイのイサキ科とは分類が異なります。ヒゲソリダイという名前の由来は諸説ありますが、口の周りがつるんとしていて髭を剃ったような顔つきに見えることから名付けられたと言われています。ヒゲが生えているヒゲダイと、髭を剃ったヒゲソリダイ。この対比が面白く、魚に詳しくなるほどこういった命名のユーモアが楽しくなってきます。
市場でもこの話をすると問屋さんや同業者と盛り上がることがあります。長年市場に通っているといろいろな魚の名前の由来や逸話が自然と頭に入ってきて、それもまた魚屋の仕事の楽しさのひとつだと感じています。
【ヒゲダイの旬】
ヒゲダイの旬は春から夏にかけてと言われています。この時期は産卵前に栄養を蓄えるため身に旨みが増し、特においしくなります。ただし年間を通じて漁獲される魚ですので、旬以外の時期でも十分においしく食べられます。
白身魚全般に言えることですが、旬の時期に比べて冬場は脂が少なくさっぱりとした味わいになります。あっさりした食感を好む方には冬のヒゲダイも十分おすすめできます。
【ヒゲダイの産地】
ヒゲダイは日本では主に本州中部以南の太平洋側、東シナ海、南シナ海などの温暖な海域に生息しています。国内での主な産地は高知県・長崎県・鹿児島県・沖縄県などが挙げられます。
水深10〜100メートルほどの岩礁帯に生息しており、釣りや底引き網で漁獲されます。産地では比較的親しまれている魚ですが、流通量が限られるため全国的な知名度はまだまだ低い状況です。鮮魚店で見かけたときはぜひ積極的に試してみてほしい魚のひとつです。
【ヒゲダイの栄養】
ヒゲダイは良質なたんぱく質を豊富に含む白身魚です。脂質が少なくカロリーが抑えめなので、ダイエット中の方や健康を意識している方にも向いています。
またDHAやEPAといった不飽和脂肪酸も含まれており、血液をさらさらに保つ効果や脳の働きをサポートする効果が期待できます。さらにビタミンB群やミネラルも含まれており、疲労回復や免疫力維持にも役立つ栄養素が摂れます。
健康のために毎日魚を買いに来てくださるお客さんの中には、魚の種類にこだわらず「今日一番栄養がある魚はどれ?」と聞いてくださる方もいます。そういうとき魚屋としては旬の魚や鮮度の良いものを自信を持っておすすめできますが、ヒゲダイのような知名度の低い魚も栄養面で優れていることをお伝えすると、新しい魚との出会いを喜んでくださることも多いです。
【ヒゲダイの選び方】
鮮魚店でヒゲダイを選ぶ際のポイントをお伝えします。まず目が澄んでいて透明感があるものを選んでください。目が濁っているものは鮮度が落ちているサインです。次に体の色が鮮やかで銀白色の輝きがあるものが新鮮な証拠です。時間が経つと表面のツヤが失われてくるので、光沢は鮮度の重要な指標になります。また魚体に張りがあり、押してみてすぐに戻るものが新鮮です。エラを確認できる場合は鮮やかな赤色のものを選ぶとより確実です。
【まとめ】
ヒゲダイは下顎の突起という個性的な外見を持ちながら、白身で旨みが豊かな食べごたえのある魚です。同じ「ヒゲ」のつく魚でもヒゲソリダイとはまったく別の種類で、分類も生態も異なります。旬は春から夏にかけてで、主な産地は高知・長崎・鹿児島など西日本の沿岸です。良質なたんぱく質とDHA・EPAを含む栄養バランスの良い魚で、健康面でも優れた食材です。市場での流通量が少ないため見かける機会は限られますが、鮮魚店で出会えたときはぜひ手に取ってみてください。
ヒゲダイの捌き方はおととチャンネルで動画で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
https://youtube.com/channel/UCKgZWNzDVFenWKZGgvUjO6A
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