ツナ缶の原料としておなじみのビンチョウマグロ。スーパーでもよく見かける身近な魚ですが、実際どんなマグロなのか、詳しく知っている方は意外と少ないかもしれません。クロマグロやメバチマグロの陰に隠れがちですが、ビンチョウマグロには他のマグロにはない独自の魅力がたくさんあります。ここでは魚屋の視点から、ビンチョウマグロの生態や旬、そして美味しさの秘密まで、じっくりとお伝えしていきます。
魚の捌き方はYouTubeチャンネル「おととチャンネル」でも動画で解説しています。ビンチョウマグロを刺身にさばいていく様子も、生のものと冷凍のもの両方ご用意しましたので、ぜひ合わせてご覧ください。
生のビンチョウマグロ:https://youtu.be/qOPiOJX8hMw
冷凍のビンチョウマグロ:https://youtu.be/-odpz6Sb7eQ
【ビンチョウマグロの名前の由来と特徴】
ビンチョウマグロは正式にはビンナガという名前で、漢字では「鬢長」と書きます。これは胸びれが非常に長く、その姿がまるで鬢(びん)、つまり顔の横の髪の毛のように見えることに由来しています。実際にビンチョウマグロを見ると、体の半分ほどもありそうな長い胸びれが目を引きます。これは他のマグロにはない、ビンチョウならではの大きな特徴です。マグロの仲間の中では小型の部類で、店に入ってくるものは数キロから十数キロほどのサイズが中心です。体は紡錘形でとても美しく、いかにも速く泳ぎそうな流線型をしています。
【生態と分布】
ビンチョウマグロは世界中の温帯から熱帯の海に広く分布する回遊魚です。マグロの仲間らしく、群れをなして広い海を絶え間なく泳ぎ続けています。泳ぎ続けることで体内に酸素を取り込んでいるため、止まることなく一生を回遊して過ごします。日本の近海にも回遊してきて、各地で漁獲されています。クロマグロのような巨大な体にはならず、比較的小ぶりなまま成熟するのも特徴です。回遊魚らしい引き締まった身を持ちながら、季節によっては脂をたっぷりと蓄え、その時期のものは格別の味わいになります。
【ビンチョウマグロの旬】
ビンチョウマグロの旬は秋から冬にかけてです。この時期のビンチョウは脂がたっぷりとのり、身がしっとりと柔らかくなります。特に冬場の脂がのったものは「ビントロ」と呼ばれ、クロマグロのトロにも引けを取らないとろけるような旨みを楽しめます。うちの魚屋でも、冬になると脂ののった上等なビンチョウが入ってきて、これを目当てに通ってくるお客さんもいるほどです。クロマグロのトロは値が張りますが、ビントロなら手頃な値段でとろけるような味わいを楽しめるので、毎日来る目の肥えた年配のお客さんにも喜ばれています。一方、夏のビンチョウはさっぱりとした淡白な味わいで、これはこれでカルパッチョなどあっさりした料理によく合います。
【美味しさの秘密とツナ缶との関係】
ビンチョウマグロの身は、マグロの中でも白っぽいピンク色をしているのが特徴です。加熱するとさらに白くなり、この色合いと淡白で上品な味わいから、海外では「シーチキン」「ホワイトミート」と呼ばれて高く評価されています。実はツナ缶の中でも上等なものには、このビンチョウマグロが使われています。クセがなく柔らかい身質は、缶詰にしても美味しく、サラダやサンドイッチなど幅広い料理に使えます。生で食べれば上品なとろけるような旨み、火を通せばふっくらと優しい味わいと、調理法によってまるで違う表情を見せてくれるのがビンチョウの奥深さです。淡白だからこそ、素材の良さがそのまま味に出る、ごまかしのきかない正直な魚とも言えます。
【まとめ】
ビンチョウマグロは、長い胸びれが特徴的な小型のマグロで、ツナ缶の原料として世界中で親しまれている魚です。旬は秋から冬で、この時期の脂がのったビントロは、クロマグロのトロにも負けない絶品の味わいを楽しめます。手頃な価格でとろけるような旨みを味わえるのは、ビンチョウマグロならではの大きな魅力です。淡白で上品な身は、刺身からステーキ、缶詰まで幅広く活躍してくれます。スーパーで見かけた際には、ぜひこの奥深いマグロの美味しさを改めて味わってみてください。きっと身近なビンチョウマグロの新たな魅力に気づいていただけるはずです。
魚の捌き方はおととチャンネルで解説しています。
https://youtube.com/channel/UCKgZWNzDVFenWKZGgvUjO6A
