キュウセンという魚を知っていますか?磯釣りや堤防釣りをする方には馴染みのある魚ですが、スーパーや一般的な魚屋の店頭ではほとんど見かけることがない魚の一つです。ベラ科の魚の中では比較的小型ですが、身は白くて旨味があり、知る人ぞ知る美味しい魚です。この記事では、魚屋として長年魚と向き合ってきた経験をもとに、キュウセンの捌き方を丁寧に解説します。
【キュウセンとはどんな魚?】
キュウセンはスズキ目ベラ科に属する海水魚で、体長は20〜30センチほどの中小型の魚です。オスは青緑色に赤い縞模様、メスは赤褐色に白い縞模様と、雌雄で体色が大きく異なるのが特徴的です。このオスの体色が「九つの線」のように見えることからキュウセンという名前がついたとも言われています。
本州中部以南の沿岸岩礁域に広く分布しており、磯釣りや堤防釣りで比較的よく釣れる魚です。関西地方では「ベラ」と呼ばれて親しまれており、煮付けや素焼きにして食べる文化が根付いています。一方で関東地方では「外道(ターゲット以外の魚)」として扱われリリースされることも多く、地域によって評価が大きく異なる魚です。
身は白身で淡白な旨味があり、小型ながら加熱すると旨味が増して美味しくいただけます。うろこが細かくぬめりがあるため下処理が少し手間ですが、丁寧に処理すれば十分に美味しい食材になります。
【捌く前の下準備】
キュウセンを捌く前に確認しておくべき点をいくつか紹介します。
キュウセンはベラ科特有の体表のぬめりがあります。このぬめりが臭みの原因になるため、捌く前に塩をまぶして全体をよくこすり、流水で洗い流しておくことが最初の重要な工程です。ぬめりをしっかり取り除くことで、その後の作業がしやすくなり仕上がりの臭みも大幅に抑えられます。
うろこは細かく身に密着しているため、うろこ取りまたは包丁の背を使ってしっかりこそぎ取る必要があります。小型の魚ですので出刃包丁は小さめのものが使いやすく、作業しやすい環境を整えてから始めることをおすすめします。
【キュウセンの捌き方・手順】
用意するもの
キュウセン
小出刃包丁
まな板
うろこ取り
キッチンペーパー
①ぬめりを取る
全体に塩をたっぷりまぶして手でよくこすり、ぬめりを浮き立たせます。流水でしっかり洗い流したらキッチンペーパーで水分を拭き取ります。一度で取りきれない場合は同じ工程をもう一度繰り返してください。この工程を丁寧に行うことが美味しく仕上げるための大前提です。
②うろこを取る
うろこ取りまたは包丁の背を使って、尾から頭に向かってうろこをこそぎ取ります。キュウセンのうろこは細かく身に密着しているため、力を入れながら丁寧に取り除きます。ひれの際やえらぶたの周辺はうろこが残りやすいため、丁寧に確認しながら作業してください。
③頭を落とす
胸びれの付け根のすぐ後ろに包丁を斜めに入れ、頭を落とします。キュウセンは小型の魚ですので、小出刃があれば十分に切ることができます。頭はあら汁に活用できますが、小型のため出汁は少なめです。
④内臓を取り出す
腹に切り込みを入れて内臓を丁寧に取り出します。キュウセンは小型の魚ですので内臓も小さく、作業自体はシンプルです。内臓を傷つけないように慎重に取り出し、取り出したらすぐに処分してください。腹の中に残った血合いや汚れを流水でしっかり洗い流し、キッチンペーパーで水分を丁寧に拭き取ります。
⑤三枚おろしにする
内臓を取り除いたら三枚おろしにしていきます。背側から包丁を入れ、背骨に沿って尾まで切り進めます。次に腹側も同様に包丁を入れ背骨から身を切り離します。反対側も同じ手順で行い、上身・下身・中骨の三枚におろします。キュウセンは小型の魚ですので、包丁を大きく動かすより細かく丁寧に動かすことがきれいに仕上げるコツです。
⑥腹骨をそぎ取り血合い骨を抜く
三枚におろした身の腹骨を包丁を寝かせるようにしてそぎ取ります。その後、身の中央に並んでいる血合い骨を骨抜きで丁寧に抜きます。キュウセンは小型のため骨も細く、骨抜きで丁寧に作業することで食べやすい状態に仕上がります。
⑦皮を引く(必要に応じて)
刺身にする場合や皮なしで調理する場合は皮を引きます。小型の魚ですので皮引きは少し難しく感じることもありますが、尾側の端に切り込みを入れてそこから皮をつまんで丁寧に引いていきます。皮ごと調理する場合は湯引きにして霜降りにすると皮の臭みが抑えられ食べやすくなります。
【魚屋の現場から】
キュウセンは関東と関西でこれほど評価が違う魚も珍しいと感じています。関西では「ベラ」と呼んで煮付けにして普通に食べる文化がありますが、関東では釣れても「外道だから」とリリースしてしまう釣り人が多い。同じ魚でも地域の食文化によってこれほど扱いが変わるのは本当に面白いと思います。市場でも関西の業者さんと話していると「ベラが入ったけど要る?」と声をかけてもらうことがあります。長年の信頼関係があるからこそ、そういった珍しい魚の情報が回ってくるのです。食べてみると淡白で美味しい白身なのに、知名度が低いせいで損をしている魚の代表格がキュウセンだと感じています。
【捌いた後の保存方法】
捌いたキュウセンはキッチンペーパーで水分をしっかり拭き取り、ラップに包んで冷蔵保存してください。小型の魚は鮮度が落ちやすいため、できれば当日中に食べることをおすすめします。冷凍する場合は1切れずつラップでしっかり包んでからジッパー付き保存袋に入れ、空気を抜いて冷凍してください。保存期間は2〜3週間を目安にしてください。
【まとめ】
キュウセンは体表のぬめりを塩でしっかり取り除くことが最初の最重要工程です。ぬめりを丁寧に取り除いてからうろこを取り、内臓を慎重に取り出して腹の中をしっかり洗うことで臭みのない美味しい状態に仕上がります。小型の魚ですので三枚おろしの際は包丁を細かく丁寧に動かすことがきれいに仕上げるコツです。関東では外道扱いされることも多い魚ですが、丁寧に捌いて調理すれば白身の旨味を十分に楽しめます。釣れた際にはぜひリリースせず持ち帰って食べてみてください。
魚の捌き方はおととチャンネルで解説しています。
https://youtube.com/channel/UCKgZWNzDVFenWKZGgvUjO6A
キュウセンの捌き方|釣り人に馴染みのあるベラの仲間を美味しく仕上げるコツ
捌き方