魚屋が教えるアンコウ鍋の作り方

【アンコウ鍋はなぜ特別なのか】
アンコウ鍋は「東のアンコウ、西のフグ」と並び称されるほど格式の高い冬の鍋料理です。茨城県や福島県では冬の味覚の王様として古くから親しまれており、特に茨城県の那珂湊や大洗周辺はアンコウ鍋の本場として全国に知られています。一般的な鍋料理と一線を画すアンコウ鍋の最大の魅力は、「どぶ汁」と呼ばれる伝統的な調理法にあります。どぶ汁とは水を一切使わずにアンコウの肝を炒めて旨味を引き出し、その旨味だけでスープを作る豪快な料理法です。
家庭で作る場合は水やだしを加えた一般的な鍋スタイルでも十分美味しく仕上がります。アンコウの身・肝・皮・えら・胃袋・卵巣・ひれという七つ道具を全部まとめて鍋に入れることで、それぞれの部位から旨味が溶け出し、他の鍋料理では味わえない複雑で濃厚なスープが生まれます。海のフォアグラとも称される肝が溶け出したスープは一度食べたら忘れられない美味しさで、冬の寒い夜に体の芯から温めてくれる最高の一品です。
【材料(3〜4人分)】
アンコウのぶつ切りを600グラムから800グラムほど用意します。七つ道具がセットになって販売されているものを選ぶと便利です。肝は特に重要な材料なので、できるだけ大きくて新鮮なものを確保してください。だしは昆布だしをベースにするのが基本で、水1リットルに対して昆布15センチ程度を目安にしてください。
野菜は白菜・長ねぎ・大根・春菊が定番です。白菜はアンコウのスープをよく吸って美味しくなるので多めに用意するのがおすすめです。春菊は香りが強くアンコウの風味と相性が良いため、ぜひ加えてみてください。豆腐は木綿豆腐を使うと崩れにくく食べ応えが出ます。きのこ類はしいたけやまいたけが合います。味付けは味噌仕立てが最も定番ですが、醤油仕立てでも絶品です。今回は家庭で作りやすい味噌仕立てのレシピを紹介します。
【下準備のポイント】
アンコウのぶつ切りは調理前に塩を軽く振って10分ほど置き、出てきた水分をキッチンペーパーで拭き取ります。さらに霜降り処理を行うとぬめりや余分な脂が取れてスープが澄んだ仕上がりになります。熱湯をさっとかけた後に冷水で洗い流すだけなので、時間があれば必ず行ってください。
肝は下準備として胆のうを丁寧に取り除きます。胆のうは緑色の小さな袋で、傷つけると苦みが出てしまうので慎重に作業してください。胆のうを取り除いた肝は流水で軽く洗ってからキッチンペーパーで水気を拭き取ります。野菜の下準備として白菜はざく切り、大根は薄めのいちょう切りにして下茹でしておくと火の通りが均一になります。長ねぎは斜め切り、春菊は食べやすい長さに切っておきましょう。
【アンコウ鍋の作り方・肝の炒め工程】
アンコウ鍋を美味しく作る最大のポイントは、肝を最初に炒めて旨味を引き出す工程です。これがどぶ汁の考え方を家庭向けにアレンジした方法で、この工程を加えるだけでスープの深みが格段に変わります。
土鍋か厚手の鍋を火にかけ、ごま油を少量引いてから肝を入れます。中火で肝を炒めながら木べらでほぐしていきます。肝から脂と旨味が溶け出してきたら、そこに昆布だしを少量加えてさらに混ぜ合わせます。肝とだしが均一になじんだら残りの昆布だしを全量加えて火を強めます。この工程を丁寧に行うことで肝の旨味がスープ全体に均一に広がり、どぶ汁に近い濃厚な味わいが生まれます。
【アンコウ鍋の作り方・煮込み工程】
だしが沸騰したらアクをすくいながら大根を加えます。大根がある程度柔らかくなったら、アンコウのぶつ切り・皮・えら・胃袋・卵巣・ひれを加えます。中火で煮ながらアクをこまめにすくい取ってください。アクをしっかり取り除くことでスープの透明感が増し、雑味のない仕上がりになります。
アンコウの身に火が通ったら白菜・豆腐・きのこを加えます。全体に火が通ったら火を弱めて味噌を溶き入れ、味を整えます。味噌は一度に全量を入れずに少しずつ溶かしながら味を見て調整するのがコツです。肝の旨味がスープに十分出ているので、味噌は控えめにしてもしっかりとした味わいになります。最後に長ねぎと春菊を加えてさっと火を通したら完成です。
【アンコウ鍋をさらに美味しくするコツ】
アンコウ鍋をより美味しく仕上げるためのポイントをいくつか紹介します。まず肝を必ず炒めてから使うことです。肝をそのまま鍋に入れるよりも、最初に炒めて旨味を引き出してからだしと合わせることでスープの深みが格段に増します。次に七つ道具を全部使うことをおすすめします。身だけで作るよりも皮・えら・胃袋・卵巣・ひれを加えることで、それぞれの部位から異なる旨味が溶け出してより複雑で豊かな味わいになります。
また土鍋を使うことをおすすめします。土鍋は保温性が高く、食卓に出してからも長時間温かい状態を保てます。アンコウ鍋は食べながら煮込んでいく料理なので、土鍋の保温性がとても重要です。締めにはうどんや雑炊が最高です。アンコウと肝の旨味が凝縮されたスープで作る雑炊は、鍋本体と同じくらい、あるいはそれ以上に美味しいと感じる方も多いです。
【醤油仕立てのアンコウ鍋について】
今回は味噌仕立てで紹介しましたが、醤油仕立てのアンコウ鍋も非常に人気があります。醤油仕立ての場合は昆布だしに醤油・みりん・酒を加えて味を整えます。スープの色が澄んでいて上品な仕上がりになり、アンコウの白身と七つ道具の色合いが美しく映えます。
醤油仕立てのほうがアンコウ本来の味をダイレクトに感じやすく、初めてアンコウ鍋を食べる方には醤油仕立てから試してみることをおすすめする場合もあります。味噌仕立てと醤油仕立て、どちらも試してみてお気に入りの味を見つけてみてください。
【まとめ】
アンコウ鍋の美味しさの核心は肝を最初に炒めて旨味を引き出す工程にあります。この一手間を加えるだけでスープの深みが格段に変わり、どぶ汁に近い濃厚な味わいが家庭でも再現できます。七つ道具を余すことなく使うことで各部位から異なる旨味が溶け出し、他の鍋料理では味わえない複雑で豊かなスープが生まれます。霜降り処理で下準備を丁寧に行い、アクをこまめにすくうことでスープの透明感が増してより美味しく仕上がります。東のアンコウと称される冬の高級鍋を、ぜひ旬の時期に家庭で楽しんでみてください。
捌き方はおととチャンネルで解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。
https://youtube.com/channel/UCKgZWNzDVFenWKZGgvUjO6A

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