シャコといえば寿司ネタというイメージが強く、家庭で料理するものではないと思われている方が多いかもしれません。ですが茹でて剥いてしまえば、あとは使い道の広い食材です。エビとは違う独特の甘みと、ほろりとほどける身の質感は、シャコでなければ出せない味わいがあります。ここでは、うちの魚屋でお客さんにお伝えしている食べ方を中心に、シャコの持ち味を引き出せるレシピを五つご紹介します。
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【シャコを料理する前に押さえておきたいこと】
シャコの料理は、ほぼすべて茹でた状態から始まります。生のシャコを刺身で食べることは産地の一部を除いてほとんどなく、家庭では茹でたものを使うのが前提だと考えてください。活きたシャコを買ってきた場合は、まず塩を入れた湯で四分から五分茹でて冷まし、殻を剥いてから調理に入ります。
もうひとつ大事なのが、シャコは追加で火を入れすぎないということです。すでに一度茹でてありますので、そこからさらに長く加熱すると身が縮んでパサついてしまいます。炒めるなら最後に加えて温める程度、煮るなら煮汁が仕上がってから加える程度で十分です。この一点を守るだけで、家庭でも産地の味に近づきます。うちの魚屋でも、シャコを買われるお客さんにはここだけは必ずお伝えしています。
【一つ目 茹でシャコをそのまま味わう】
まず試していただきたいのが、何も足さずに茹でたてを食べる方法です。シャコの旨みは繊細で、塩気と甘みのバランスがそのままでちょうど良く仕上がります。茹でるときの塩加減さえ合っていれば、調味料は必要ありません。
塩加減の目安は、水一リットルに対して塩三十グラムほどです。海水と同じくらいと覚えておくと分かりやすいと思います。茹で上がったらざるに広げて自然に冷まし、粗熱が取れたところで剥いて食べるのが一番美味しい瞬間です。お好みで、酢醤油を少しつけると味が引き締まります。産地では茹でたてを立ったまま剥いて食べるのが一番のごちそうとされていて、これは家庭でも再現できるぜいたくです。春先に卵を持ったシャコが手に入ったら、その卵の濃厚さもぜひ味わってみてください。
【二つ目 シャコの握り寿司と酢飯もの】
寿司ネタとして知られているだけあって、酢飯との相性は抜群です。家庭で握るのが難しければ、ちらし寿司やばら寿司の具として散らすだけでも十分に主役になります。
剥いたシャコの身を酢飯の上に並べ、上から煮切り醤油かツメを刷毛で塗ります。ツメというのは、みりんと醤油を煮詰めて作る甘辛いタレのことです。市販のうなぎのタレで代用しても構いません。シャコの淡い甘みに、少し濃いめの甘辛いタレが合わさると、寿司屋で食べるあの味に近づきます。
酢飯にきゅうりの薄切りや大葉、白ごまを混ぜ込んでおくと、さっぱりとした一皿になります。シャコは並べたときの見栄えが良いので、来客のときの一品としても重宝します。
【三つ目 シャコの唐揚げ】
殻を剥いたシャコを唐揚げにすると、外は香ばしく中はふっくらとした、また違った顔になります。剥き身の水気をキッチンペーパーでしっかり拭き取り、酒と醤油を少量まぶして下味をつけます。生姜のすりおろしを加えると、風味が引き立ちます。
下味をつけたら片栗粉を薄くまぶし、百八十度の油で揚げます。すでに火は通っていますので、衣が固まって色づくまでの一分ほどで十分です。長く揚げると身が縮んで硬くなりますので、短時間で引き上げてください。
塩を振るだけでも美味しく、レモンを絞るとさっぱりします。剥いたときに身が崩れてしまったものも、唐揚げにすれば形を気にせず使えます。剥き方に慣れないうちは、崩れた身をまとめて唐揚げに回すのがおすすめです。
【四つ目 シャコと野菜の炒め物】
シャコは中華風の炒め物にもよく合います。にんにくと生姜を油で炒めて香りを出し、そこに小松菜や長ねぎ、しめじといった野菜を入れて炒めます。野菜に火が通ったところで、最後にシャコの剥き身を加えます。
シャコを入れてからは十数秒で十分です。全体を軽く合わせ、酒と醤油、塩で味を調えたらすぐに火を止めてください。仕上げにごま油を回しかけると香りが立ちます。オイスターソースを少量加えると、コクが出て中華らしい味わいになります。
シャコの甘みは炒め物の中でも消えずに残りますので、野菜の中に埋もれることがありません。手軽に作れて、ご飯にもよく合う一品です。
【五つ目 シャコの味噌汁と殻の出汁】
意外と知られていないのが、シャコの殻から出る出汁の良さです。剥いたあとに残る殻や頭を捨ててしまう方が多いのですが、ここに旨みが詰まっています。
殻と頭を鍋に入れ、水から火にかけて弱めの中火で十分ほど煮出します。沸騰させ続けると濁って雑味が出ますので、静かに煮る程度にしてください。煮出したらざるでこして、出汁として使います。この出汁で味噌汁を作り、最後に剥き身を数尾入れれば、香りの立った一杯になります。
同じ出汁は、そうめんのつゆやかき玉汁、雑炊にも使えます。うちの魚屋でも、シャコを剥いた日は殻をまとめて出汁にするという話をよくお客さんとしています。捨てる部分から一品増えるわけですから、覚えておいて損はありません。
【魚屋から見たシャコの選び方と使い分け】
シャコを選ぶときに見ているのは、殻の張りと重さです。手に取ったときにずしりと重みを感じるものは身が詰まっていて、軽く感じるものは身が痩せています。シャコは鮮度が落ちると殻の中で身が縮んでいきますので、この重さの違いがそのまま身の入り具合を表しています。
すでに茹でられた状態で売られているものを買うときは、色を見てください。赤みがはっきりしていて殻に艶があるものが良い状態です。春先の卵を持ったものはカツブシと呼ばれて特に喜ばれますが、卵に栄養が回っている分だけ身は少し痩せます。身をたっぷり食べたいのか、卵の濃厚さを味わいたいのかで選び分けると失敗がありません。
【まとめ】
シャコは茹でて剥いてしまえば、家庭でも幅広く使える食材です。茹でたてをそのまま食べるのが最も贅沢な味わい方で、酢飯に乗せれば寿司屋の味に近づきます。唐揚げは百八十度で一分、炒め物は最後に加えて十数秒、どちらも火を入れすぎないことが決め手です。剥いたあとの殻と頭は捨てずに煮出せば、上質な出汁が取れて味噌汁が一段と良くなります。すでに一度茹でてあるということを忘れずに、追加の加熱は短くとどめてください。それだけで、シャコ本来の甘みとほろりとした食感をしっかり楽しめます。
魚の捌き方はおととチャンネルで解説しています。
