静岡サーモンとはどんな魚?魚屋が教える生態・旬・美味しさの秘密

魚の基本知識

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最近、スーパーや鮮魚店で「静岡県産」と書かれた生のサーモンを見かけるようになりました。サーモンといえばノルウェーやチリからの輸入品が当たり前、と思っている方がほとんどだと思います。ところが今、日本国内で育てられたアトランティックサーモンが本格的に流通し始めていて、その中心にあるのが静岡県で養殖されているサーモンです。うちの魚屋でも扱うようになりましたが、実際に手に取ってみると輸入品とは明らかに違う点がいくつもあります。今回は魚屋の目線で、静岡サーモンとはどんな魚なのかを掘り下げて解説していきます。

魚の捌き方はYouTubeチャンネル「おととチャンネル」でも動画で解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。
サーモンの捌き方をYouTubeでも動画で解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。

【静岡サーモンとはどんな魚なのか】

静岡サーモンという言い方は、静岡県内で養殖されたサーモンをまとめて指す呼び名として使われています。中でも近年大きな注目を集めているのが、静岡県小山町にある国内最大級の陸上養殖施設で育てられたアトランティックサーモンです。ノルウェーの養殖会社が富士山麓に施設を構え、日本で初めて国産の養殖アトランティックサーモンとして出荷を始めました。今では鮮魚専門店や量販店、百貨店を中心に店頭へ並ぶようになっています。

ただ、少し紛らわしいところがあります。静岡県には他にもサーモンのブランドがいくつかあり、富士宮市の湧水で育てられたニジマス系のものや、静岡市で地下海水を使って育てられたものなど、魚の種類も育て方もそれぞれ違います。同じ静岡のサーモンでも中身はまったくの別物です。買うときはパッケージの表示に目を通して、どの種類なのかを確かめる習慣をつけておくと失敗がありません。

【アトランティックサーモンの生態】

アトランティックサーモンはサケ科サケ属に分類される魚で、その名の通り北大西洋を故郷とする種類です。日本の川に遡上するシロザケやカラフトマスとは別の魚で、本来は日本の近海にはいません。天然のものは川で生まれて海へ下り、外洋で数年かけて大きく育ってから産卵のために生まれた川へ戻ってきます。海と川を行き来しながら成長するという点は、日本のサケの仲間とよく似た生き方です。

体は大きくなる魚で、養殖されるものでも二年近くかけて五キロ前後まで育てられます。うちの魚屋に入ってくる魚の中でも、まるごと一本となるとかなりの存在感があります。身は鮮やかなオレンジ色をしていますが、これは餌に含まれる色素が身に移ることで生まれる色です。天然のものは甲殻類を食べることでこの色になり、養殖のものは配合飼料に同じ成分を加えて育てられています。

【閉鎖循環式の陸上養殖という育て方】

静岡のアトランティックサーモンで特徴的なのが、閉鎖循環式陸上養殖と呼ばれる方法で育てられている点です。海ではなく陸上のタンクで育て、使った水をろ過して繰り返し使う仕組みになっています。外の海とつながっていないため、水温も水質も一年を通して一定に保つことができます。ふ化から出荷までおよそ二年をかけて、じっくりと大きく育てられます。

魚屋の立場から見て面白いのは、この育て方が魚の状態にそのままあらわれることです。海面養殖のサーモンは季節によって水温が変わるので、身の締まりや脂の乗りに波が出ます。ところが陸上養殖のものは環境が安定しているぶん、いつ仕入れても品質のばらつきが少ないのです。毎回同じ状態のものが入ってくるというのは、値段をつける側からしてもお客さんに説明する側からしても、とてもありがたいことです。

【輸入サーモンとの一番の違いは凍っていないこと】

輸入のアトランティックサーモンは、遠い海の向こうから何日もかけて運ばれてきます。冷凍で入ってくるものも多いですし、生のまま空輸されたものでも、水揚げから店頭に並ぶまでには相応の時間が経っています。それに対して静岡のサーモンは、国内で育てられて国内で加工され、凍らせることなく生のまま流通します。この差は想像以上に大きいです。

冷凍と解凍を経た身は、どうしても細胞が壊れてドリップが出やすくなります。うちの魚屋でも、輸入の冷凍サーモンをさばくとバットに水分がたまりやすいのに対し、静岡のものは切っても身がしっとりと落ち着いていて、水っぽさが出にくいと感じます。指で押したときの弾力も、生のままのほうが明らかに強いです。刺身にしたときの舌ざわりの違いは、食べ比べてみるとはっきりわかると思います。

【味わいと脂の乗り方】

アトランティックサーモンはもともと脂の乗りが良い魚ですが、静岡のものは脂が強すぎず、ほどよいところに収まっている印象です。輸入品の中には脂が濃すぎて数切れで飽きてしまうものもありますが、こちらは甘みと旨みのバランスが取れていて、最後まで気持ちよく食べられます。身の色も鮮やかで、切り口の照りがきれいに出ます。

市場の問屋さんは、新しい魚が入ると必ずうちに声をかけてくれます。長年の付き合いの中で、うちがどういう魚を欲しがるかをわかってくれているからです。静岡のサーモンも入荷が始まった頃に真っ先に知らせてもらい、少し取り置きしてもらって試したのが最初でした。自分の手で切って食べてみて、これは店に出せると判断した魚です。毎日来てくださる目の肥えた年配のお客さんにも出してみましたが、脂がしつこくないという点をすぐに見抜かれました。

【寄生虫のリスクについて】

サーモンと聞くとアニサキスを心配される方が多いと思います。陸上養殖の魚は外の海とつながっておらず、天然の生き餌ではなく管理された配合飼料だけで育てられます。アニサキスは魚が寄生虫を持つ小さな生き物を食べることで体内に取り込まれるため、この育て方だと寄生虫が入り込む経路そのものがほとんどありません。生食を前提とした流通ができるのは、この安全性が土台にあるからです。

ただし、これはあくまで管理された陸上養殖のものに限った話です。天然のサケや海面で育てられたサーモンは事情がまったく違います。表示をよく見ずにサーモンなら安全だと思い込んでしまうのは危険ですから、そこはきちんと切り分けて考えてください。

【旬はあるのか】

天然の魚には産卵期に合わせた旬がありますが、静岡のアトランティックサーモンは水温が一定に保たれた環境で通年出荷されるため、季節による当たり外れがほとんどありません。夏場は海水温が上がってサーモンの養殖が難しくなるのが普通ですが、陸上養殖ならその制約を受けないので、一年を通して同じ状態のものが手に入ります。いつ買っても同じ品質が期待できるというのは、天然の魚にはない養殖ならではの強みです。

【美味しい静岡サーモンの選び方】

選ぶときに見てほしいのは、身の色つやとドリップの量です。パックの底に赤い水分がたまっているものは避けてください。切り口の脂の筋がくっきりと白く浮かび、身がぼやけずに輪郭を保っているものが良い状態です。柵で買えるならそのほうが確実で、家で切る直前まで切り口を空気にさらさずに済みます。うちの店でも、刺身用なら柵でお求めになるお客さんのほうが満足度が高いと感じています。

もうひとつ、値段の見方にも気をつけてください。魚の値段はキロあたりで表示されていることがあり、一本まるごとの値段だと思い込んで驚かれる方がときどきいらっしゃいます。サーモンのような大きな魚ほど差が出ますので、表示がキロ単位か一パック単位かを確かめてから手に取ると安心です。

【まとめ】

静岡サーモンは、静岡県内で養殖されたサーモンの総称であり、中でも小山町の陸上養殖施設で育てられたアトランティックサーモンが近年大きな注目を集めています。アトランティックサーモンはもともと北大西洋を故郷とするサケ科の魚で、二年近くかけて五キロ前後まで育てられます。海とつながらない閉鎖循環式の環境で育つため品質のばらつきが少なく、国内で加工されて凍らせずに流通するので、輸入品にはない生ならではの食感と旨みが楽しめます。脂の乗りはほどよく、甘みと旨みのバランスが取れているのも魅力です。同じ静岡でもニジマス系の別ブランドがあるので、買うときは表示を確かめてください。国産サーモンはこれから確実に増えていく分野です。店頭で見かけたら、ぜひ一度輸入品と食べ比べてみてください。アニサキスがいる魚介類は一度マイナス18度以下で24時間冷凍して下さい。

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この記事を書いた人
おとと

魚屋歴20年の現役魚屋「おとと」です。毎日店頭で魚を捌きながら、魚の捌き方・料理・保存方法をブログとYouTube「おととチャンネル」(登録者1.1万人)で発信しています。現場のプロ目線で、家庭でもできる魚の扱い方をわかりやすくお伝えします。

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