「関サバ」「大間のマグロ」「氷見のブリ」など、魚にもブランドがあることはよく知られています。しかしブランド魚がなぜ高いのか、何がそんなに違うのかをきちんと説明できる人は意外と少ないものです。今回は魚屋として長年魚と向き合ってきた経験をもとに、魚のブランドの秘密をわかりやすく解説します。
【ブランド魚とは何か】
ブランド魚とは特定の産地や漁法・品質基準を満たした魚に与えられる称号のようなものです。農産物でいえばブランド牛や特定の産地のお米に近いイメージです。
ブランド魚には産地のお墨付きがあり、品質が保証されています。そのため一般の魚と比べて高い価格がつくことが多く、贈り物や特別な食事の場で重宝されます。
【ブランド魚が高い理由】
ブランド魚が高い理由はいくつかあります。
漁獲量が限られている
有名ブランド魚の多くは漁獲量が限られています。「大間のマグロ」は青森県大間町の一本釣りで漁獲されたクロマグロのみがブランドを名乗れます。一本釣りは網漁と違って魚へのストレスが少なく、品質が高い反面漁獲量が少なくなります。
厳しい品質基準がある
ブランド魚には厳しい品質基準が設けられていることが多いです。サイズ・重量・鮮度・脂のりなど複数の基準をクリアしたものだけがブランドを名乗れます。基準を満たさないものはブランドとして出荷できないため、必然的に流通量が少なくなります。
漁法や締め方にこだわりがある
ブランド魚の多くは漁法や活け締めの方法にこだわっています。「関サバ」「関アジ」は大分県の佐賀関沖で一本釣りされた後、丁寧に活け締めされます。活け締めをすることで魚のストレスが最小限になり、旨味が逃げにくくなります。
ブランドの知名度と信頼性
長年かけて築き上げたブランドの知名度と信頼性も価格に影響します。消費者がブランドに価値を認めているからこそ高い価格がつくわけです。
【代表的なブランド魚を紹介】
日本には数多くのブランド魚があります。代表的なものを紹介します。
大間のマグロ(青森県)
青森県大間町で一本釣りされたクロマグロです。津軽海峡の荒波で育ったマグロは脂がのって旨味が強く、毎年1月の初競りで億単位の価格がつくこともある最高級ブランドです。
関サバ・関アジ(大分県)
大分県佐賀関沖で一本釣りされたサバとアジです。豊後水道の速い潮流で育った魚は身が引き締まって脂がのっており、鮮度管理も徹底されています。
氷見のブリ(富山県)
富山県氷見市で水揚げされる寒ブリです。冬の日本海で育ったブリは脂が豊富で濃厚な旨味があります。氷見漁港に水揚げされたものだけが「ひみ寒ぶり」のブランドを名乗れます。
桜鯛(各地)
春の産卵前に旬を迎える真鯛の総称です。特に明石(兵庫県)や愛媛県産のものが有名で、鮮やかなピンク色と豊かな旨味が特徴です。
のどぐろ(石川県・島根県など)
正式名称はアカムツで、のどの内側が黒いことからこの名前がついています。白身魚でありながら脂がのっており「白身のトロ」とも呼ばれる高級魚です。
【ブランド魚と一般の魚の味の違いは?】
魚屋として正直に言うと、ブランド魚と一般の魚の味の差は確かにありますが、必ずしもブランド魚が圧倒的に美味しいとは限りません。
鮮度が抜群の一般の魚と鮮度が落ちたブランド魚を比べれば、鮮度のよい一般の魚のほうが美味しいこともあります。ブランドはあくまで品質の目安であり、最終的な美味しさは鮮度や調理方法にも大きく左右されます。
ブランドに惑わされすぎず、鮮度を重視して魚を選ぶ習慣をつけることが本当に美味しい魚を食べるための近道です。
【地域のブランド魚を楽しもう】
有名なブランド魚だけでなく地域ごとに独自のブランド魚があります。全国各地の漁港で水揚げされる地元のブランド魚を楽しむことも魚食の醍醐味のひとつです。
旅行先で地元のブランド魚を食べたり、産地直送で取り寄せたりすることで普段とは違う魚の美味しさを体験できます。地元の魚屋に「この地域のおすすめの魚は何ですか?」と聞いてみると思わぬ発見があるかもしれません。
【まとめ】
魚のブランドは漁獲量の少なさ・厳しい品質基準・こだわりの漁法・長年の信頼によって生まれます。ブランド魚は確かに品質が高いですが、鮮度のよい魚を選ぶことが美味しい魚料理への一番の近道であることも忘れないでください。
ブランドを知識として持ちながらも鮮度を優先して魚を選ぶ、それが魚屋として消費者の皆さんにお伝えしたい一番大切なことです。
捌き方はおととチャンネルで解説しています。
https://youtube.com/channel/UCKgZWNzDVFenWKZGgvUjO6A
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