【からすみとはどんな食べ物か】
からすみとはボラの卵巣を塩漬けにして乾燥させた加工食品で、日本三大珍味のひとつとして知られています。残りの二つはウニとコノワタ(ナマコの腸の塩辛)で、いずれも手間と時間をかけて作られる贅沢な食材です。からすみという名前は形が中国の墨(唐墨・からすみ)に似ていることに由来していると言われています。
本格的なからすみは塩漬けにした後に何日もかけてじっくり乾燥させるため完成まで1〜2週間ほどかかります。市販の本物のからすみは非常に高価で、良質なものは1腹数万円することもあります。ボラの旬である秋から冬にかけて卵巣が大きく育つため、この時期に仕込まれることが多いです。
今回紹介するのは本格的なからすみを自宅で手軽に再現した「からすみ風卵の塩漬け」です。完全に乾燥させる本格的な工程を省いて塩漬けの状態で仕上げるため、数日で完成します。本格からすみとは少し異なりますが濃厚な旨味と塩気はしっかり楽しめる魚屋ならではの一品です。ボラを捌いた際に卵巣が入っていたらぜひ試してみてください。
【材料】
ボラの卵巣(真子):1腹、塩:卵巣の重さの15〜20パーセント程度、酒:適量、みりん:適量
【卵巣の下処理】
からすみ風塩漬けを美味しく仕上げるためには卵巣の丁寧な下処理が最も大切な工程です。ボラを捌いた際に取り出した卵巣についている血管や余分な薄皮を丁寧に取り除きます。血管が残っていると仕上がりに臭みが残る原因になるので指で優しく押さえながら血を絞り出すようにして取り除いてください。
卵巣の表面についている血をきれいに取り除いたら流水で丁寧に洗います。洗い終わったらキッチンペーパーで水気をしっかり拭き取ります。水気が残っていると塩漬けの際に余分な水分が出すぎて仕上がりが水っぽくなるので丁寧に拭き取ることが大切です。
次に卵巣の表面に細い針やつまようじで細かく穴を開けます。これは塩漬けの際に余分な水分が均一に抜けやすくするためです。全体に均一に穴を開けることで塩が均一に入り仕上がりにムラが出にくくなります。
【塩漬けの手順】
下処理が終わった卵巣の重さを測り卵巣の重さに対して15〜20パーセントの塩を用意します。例えば卵巣が100グラムであれば塩は15〜20グラムです。塩の量が少なすぎると傷みやすくなり多すぎると塩辛くなりすぎるので分量を守ることが大切です。
バットに塩を薄く敷き卵巣を並べます。卵巣の上からも残りの塩をまんべんなくふりかけて全体を塩でしっかり覆います。ラップをかけて冷蔵庫に入れます。
冷蔵庫で1日置くとかなりの水分が出てきます。この水分をキッチンペーパーで丁寧に拭き取り新しい塩を薄く追加してさらに1日置きます。この作業を2〜3日繰り返すことで余分な水分が抜けて旨味が凝縮されていきます。水分が出なくなってきたら塩漬けの工程は完了です。
【みりんと酒で仕上げる】
塩漬けが完了したら表面の塩を流水で軽く洗い流してキッチンペーパーで水気を拭き取ります。次にみりんと酒を合わせたものを卵巣の表面に塗ります。みりんと酒を塗ることで表面に艶が出て風味も豊かになります。
みりんと酒を塗った卵巣をラップで包まずにバットの上に置いて冷蔵庫で1日乾燥させます。表面が少し乾いてきたら完成です。本格的なからすみのように完全に乾燥させる必要はなく表面に軽く膜が張った状態が食べ頃の目安です。
より本格的な仕上がりを目指す場合はみりんと酒を塗った後に風通しの良い場所で陰干しする工程を加えます。冷蔵庫の中で数日かけてゆっくり乾燥させる方法でも代用できます。乾燥が進むほど旨味が凝縮されてより本格的なからすみに近い味わいになります。
【食べ方と保存方法】
完成したからすみ風塩漬けは薄くスライスして大根やきゅうりと一緒に食べるのが定番です。大根の爽やかな辛みとからすみの濃厚な旨味と塩気が絶妙に合います。日本酒や焼酎との相性も抜群で、お酒のつまみとして最高の一品です。
パスタに薄くスライスしたからすみ風塩漬けをのせるのもおすすめです。オリーブオイルとにんにくで仕上げたシンプルなパスタにからすみを削りかけるだけで一気に本格的なからすみパスタが完成します。イタリアでも同様のボラの卵巣の塩漬け「ボッタルガ」がパスタに使われており世界共通の美味しさです。
保存はラップでしっかり包んで冷蔵庫で保存します。塩漬けの状態であれば1週間程度は美味しく食べられます。長期保存したい場合はラップで包んだ上からさらにアルミホイルで包んで冷凍保存することをおすすめします。冷凍保存であれば1ヶ月程度保存できます。食べる際は冷蔵庫でゆっくり解凍してください。
【本格からすみとの違い】
本格的なからすみは塩漬けの後に塩抜きを行い表面をみりんで拭いてから数日〜2週間かけてじっくり乾燥させます。乾燥が進むほど水分が抜けて旨味が凝縮され琥珀色の美しい見た目になります。完成した本格からすみは非常に硬くチーズのような食感になります。
今回紹介したからすみ風塩漬けは乾燥工程を最小限にとどめているため本格からすみよりも柔らかくしっとりした食感です。完成までの日数も大幅に短縮できるため気軽に挑戦できるのが最大のメリットです。本格からすみへの入門編として気軽に試してみてください。
【まとめ】
ボラのからすみ風卵の塩漬けはボラを捌いた際に卵巣が入っていたら絶対に試してほしい一品です。丁寧な下処理と毎日の水分拭き取りを根気よく続けることで日本三大珍味のひとつであるからすみの風味を自宅で手軽に楽しめます。本格的なからすみと比べると乾燥が浅い分しっとりとした食感ですが濃厚な旨味と塩気は十分に楽しめます。ボラは卵巣だけでなく胃袋のへそも珍味として楽しめる魚です。捌いた際は身はもちろんのこと内臓まで余すことなく活用してみてください。
アニサキスがいる魚介類は一度マイナス18度以下で24時間冷凍して下さい。
捌き方はおととチャンネルで解説しています。
https://youtube.com/channel/UCKgZWNzDVFenWKZGgvUjO6A
魚屋が教えるボラのからすみ風卵の塩漬けの作り方
保存・下処理