魚屋の現場では、ベラの仲間はどちらかというと脇役扱いされることが多い。しかしササノハベラは身質がよく、正しく捌けば十分に食卓で主役を張れる魚だ。磯や堤防で釣れることが多く、釣り人が持ち込んでくることもある魚のひとつで、店でも扱う機会がある。見た目の派手さに反して味は淡白で上品、捌き方さえ覚えれば様々な料理に応用できる。
【ササノハベラとはどんな魚か】
ササノハベラはスズキ目ベラ科に属する海水魚で、体長は20センチ前後のものが多い。体側に笹の葉を思わせる模様があることからこの名がついた。オスとメスで体色が大きく異なり、オスは青みがかった鮮やかな色合い、メスは茶褐色系の落ち着いた色をしている。同じベラ科のキュウセンやイラ(ハトダイ)と同様、ベラの仲間は全体的に見た目が派手なものが多い。
日本各地の沿岸に生息しており、岩礁帯や藻場を好む。釣りでは磯釣りや堤防釣りのターゲットとして親しまれており、専門に狙う釣り人もいる。市場への流通量はそれほど多くないが、産地周辺では普通に食べられている魚だ。
【捌く前の準備】
ササノハベラを捌く前にまず道具を揃えておこう。必要なのは出刃包丁、柳刃包丁またはペティナイフ、まな板、ウロコ取りまたは包丁の背、そしてキッチンペーパーだ。魚屋の現場では当たり前のことだが、道具はあらかじめ清潔にしておくことが大前提になる。
購入直後や釣り上げた直後の魚は活きがいいため、下処理は早めに済ませるのが基本だ。時間が経つほど身が傷み、臭みも出やすくなる。特に夏場は鮮度の落ちが早いので注意してほしい。
【ウロコの取り方】
ササノハベラはウロコが比較的大きく、はがれやすいのが特徴だ。ウロコ取りや包丁の背を使って、尾から頭に向かってこそげるように取っていく。ベラ科の魚は体のラインが丸みを帯びているため、腹側や背びれ周辺など取り残しが出やすい。丁寧に全体をなぞるようにして確認しながら進めよう。
ウロコが飛び散りやすいので、シンクの中や新聞紙を広げた上で作業すると後片付けが楽になる。魚屋の現場でもウロコ飛びは日常茶飯事で、慣れた職人でも必ず養生してから作業に入る。
【頭の落とし方】
ウロコが取れたら頭を落とす。胸びれの付け根のすぐ後ろに包丁を入れ、斜めに切り落とすイメージで進めると無駄なく落とせる。ササノハベラは小型魚なので力はさほど必要ないが、骨に当たったら包丁をゆっくり押しながら切り進めると綺麗に落とせる。
頭を落とす前に、エラぶたを開けてエラを確認しておくとよい。エラが鮮やかな赤色をしているものは鮮度がよい証拠で、褐色や灰色に変色しているものは鮮度が落ちているサインだ。
【内臓の取り出し方】
頭を落とした後、腹側に浅く包丁を入れて開き、内臓をまとめてかき出す。ここで大事なのは胆嚢(たんのう)を傷つけないことだ。胆嚢を破ると苦い胆汁が身に染み込み、味が落ちてしまう。小さな緑色の袋がそれなので、丁寧に取り除こう。
内臓を取り出したら腹腔内の血合いを流水で洗い流す。血合いは臭みの原因になるため、指でこすりながらしっかり取り除くことが大切だ。洗い終わったらキッチンペーパーでしっかり水気を拭き取る。水気を残したままにすると身が傷む原因になるので、この工程は丁寧に行ってほしい。
【三枚おろしの手順】
ササノハベラの三枚おろしは基本に忠実に進めれば問題ない。まず背側から包丁を入れ、中骨に沿わせながら尾の方向へ刃を走らせる。次に腹側から同じように包丁を入れ、背と腹の切り込みを繋げるようにして身を外す。反対側も同じ要領で進めれば三枚おろしの完成だ。
ササノハベラは小ぶりな魚なので、包丁を大きく動かすより、刃を骨に密着させながら小刻みに動かすとうまくいく。骨から身を外す際に「ガリガリ」と骨に当たる感触があれば、包丁が正しく中骨に沿っている証拠だ。魚屋の現場でもこの感触を大事にしながら捌いている。
【腹骨と血合い骨の処理】
三枚おろしが完成したら、腹骨をすき取る。包丁を腹骨の下に差し込み、骨に沿わせながらそぎ取るように進める。力を入れすぎると身まで削ってしまうので、力加減に注意しながら丁寧に進めよう。
血合い骨は中央付近に一列並んでいる小骨だ。骨抜きを使って一本ずつ丁寧に抜いていく。指で身をなぞるように確認しながら抜き残しがないようにする。小骨の多い魚ではないが、丁寧に処理しておくと食べるときに格段に快適になる。
【皮の引き方】
刺身や薄造りにする場合は皮を引く必要がある。尾側の端から皮と身の間に包丁を入れ、皮を引っ張りながら包丁を前後に動かして進めていく。ベラ科の魚は皮が比較的薄いので、力を入れすぎず滑らかに進めるのがポイントだ。
塩焼きや煮付けにする場合は皮ごと調理してかまわない。ベラの皮には旨みがあるため、皮付きのまま食べると風味が増す。料理の目的に合わせて皮の処理を決めよう。
【鮮度を保つための下処理のまとめ】
捌いた後の身は使わない分をすぐにラップで包み、冷蔵または冷凍で保存しよう。冷蔵なら当日から翌日中、冷凍なら2〜3週間を目安に食べ切るのが理想だ。魚屋の現場では水気をしっかり取ってからラップで密封し、さらにチャック付き袋に入れて保存することを徹底している。空気に触れる面積を減らすことが鮮度維持の基本だ。
ササノハベラは磯の香りが豊かで、シンプルな塩焼きや揚げ物にしても美味しい魚だ。丁寧に捌いてぜひ食卓で楽しんでほしい。
魚の捌き方はおととチャンネルで解説しています。
https://youtube.com/channel/UCKgZWNzDVFenWKZGgvUjO6A
ササノハベラの捌き方|魚屋が教える基本手順と下処理のコツ
捌き方