本記事にはアフィリエイトリンクが含まれています。
静岡で養殖されている国産のアトランティックサーモンは、一度も凍らせずに生のまま流通するのが最大の持ち味です。せっかくこの状態で手に入るのですから、その良さがはっきり出る食べ方を選びたいところです。今回はうちの魚屋で実際にお客さんへおすすめしている食べ方の中から、家庭で作りやすくて失敗しにくいものを五つ選んでご紹介します。特別な道具も難しい技術もいりません。切り方と火の入れ方を少し意識するだけで、いつものサーモンがまるで違う一皿になります。
サーモンの捌き方をYouTubeでも動画で解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。
【一品目 厚切りの刺身】
まず試していただきたいのが、何も足さない刺身です。しかも厚めに切ってください。輸入の冷凍サーモンは身が水っぽくなりやすいので薄く切ったほうがごまかしが利くのですが、凍らせていない生の身は弾力がしっかり残っているので、厚く切ったほうが持ち味が出ます。目安としては一切れが一センチ前後、指の腹くらいの厚みです。
切るときは、柵の繊維に対して直角に包丁を当てて、手前に引くように一度で切り落とします。ノコギリのように前後させると断面が毛羽立って、せっかくの照りが消えてしまいます。醤油はつけすぎず、わさびよりも塩とオリーブオイルを少しだけ添えるほうが、この魚の甘みははっきり出ます。
うちの店では、一尾まるごと買われるお客さんばかりではありません。一切れだけ、一柵だけという方にも同じように向き合っています。少量でも加工のご依頼をお受けしていますし、そのほうが本当に食べたい量を良い状態で食べていただけると思っています。
【二品目 皮目を炙った炙りサーモン】
生のままも良いのですが、皮目だけに火を入れると香りが立ちます。皮付きの柵を用意して、皮を上にして金網かアルミホイルの上に置きます。バーナーがあれば皮目に直接当てて、皮が縮んで香ばしい色がつくまで炙ります。バーナーがなくても、フライパンをよく熱して油を薄く引き、皮目だけを十数秒押しつければ同じことができます。
大事なのは、炙ったらすぐに氷水に浸けて冷やし、水気をしっかり拭き取ることです。余熱で中まで火が通ってしまうと、生の食感が消えてしまいます。冷えたら厚めに切って、ポン酢や刻んだ薬味を添えてください。皮の香ばしさと中の生の甘みが同時に来るので、刺身とはまったく別の料理になります。
【三品目 皮がパリパリのポワレ】
焼いて食べるなら、これがいちばんおすすめです。切り身に軽く塩を振って十分ほど置き、出てきた水分をきっちり拭き取ります。この拭き取りを省くと皮は絶対にパリパリになりません。フライパンに油を薄く引いて中火にかけ、皮を下にして入れたら、フライ返しで数十秒しっかり押さえつけます。皮が反り返るのを防いで、全体を均一に接地させるためです。
あとは触らずに、焼き色がつくまでじっと待ちます。身の側面を見て、白っぽく火が入ってきたのが厚みの半分を超えたあたりで裏返し、身側は数十秒だけ焼いて火を止めます。サーモンは火を入れすぎると一気にパサつく魚なので、中心が少ししっとりしているくらいで引き上げるのが正解です。仕上げにバターを落として溶かし、醤油を少し垂らせば、それだけで店の味になります。
【四品目 ハラスの塩焼き】
サーモンでいちばん脂が乗っているのが、腹側のハラスと呼ばれる部分です。柵を取ったときに残る細長い部位で、脂が強くて刺身には向きませんが、焼くと格別です。両面に塩を振って三十分ほど置き、出てきた水分を拭いてから焼きます。
焼くときは脂がたくさん出るので、グリルなら受け皿に水を張り、フライパンなら油を引かずにそのまま焼いてください。自分の脂で揚がるように焼き上がります。焦げやすいので火加減は弱めの中火が安心です。大根おろしとレモンを添えれば、脂の強さがちょうどよく中和されます。この部位はスーパーではあまり見かけませんが、魚屋なら分けてもらえることが多いので、聞いてみる価値があります。
【五品目 サーモンのオイルマリネ】
作り置きができて、時間が経つほど味がまとまるのがマリネです。切り身か柵を一口大に切り、塩を軽く振って十分置いてから水気を拭きます。保存容器に入れて、オリーブオイルをひたひたに近い量まで注ぎ、薄切りの玉ねぎとレモン、粒黒こしょう、ローリエがあれば一枚加えます。冷蔵庫で数時間置けば食べられますし、翌日のほうが味が落ち着いています。
未冷凍の生サーモンだからこそ、こういう置いて味わう料理が生きてきます。冷凍を通った身では水分が出てしまって、こうはまとまりません。パンに乗せてもいいですし、そのまま白いご飯の上に乗せても意外なほど合います。
先日、常連のお客さんが小さいお子さんを連れて来られて、目の前でサーモンを捌くところを見せたことがありました。じっと見ていたその子が、帰り際に魚屋さんになりたいと言ってくれたときは、正直うれしかったです。魚は切っているところを見せるだけで、食べる楽しみが何倍にもなる食材だと思っています。
【まとめ】
静岡サーモンは凍らせずに生のまま流通する魚なので、その良さがはっきり出る食べ方を選ぶのが何よりの近道です。厚切りの刺身で弾力と甘みをそのまま味わい、皮目を炙れば香ばしさが加わって別の料理になります。焼くなら塩を振って水分を拭き取ってからのポワレが失敗しにくく、皮がパリパリに仕上がります。脂の乗ったハラスは塩焼きにすると格別ですし、オイルマリネにしておけば作り置きもできて翌日のほうが味がまとまります。どの食べ方も、共通して大事なのは水分を拭き取ることと、火を入れすぎないことの二つだけです。この二つさえ守れば、家庭でも店と同じ仕上がりに近づけます。ぜひ気になったものから試してみてください。アニサキスがいる魚介類は一度マイナス18度以下で24時間冷凍して下さい。
魚の捌き方はおととチャンネルで解説しています。
魚屋歴20年以上の経験をまとめた電子書籍シリーズ「魚屋の教科書」がKindleで発売中です。下処理・目利き・保存と冷凍・捌き方・青魚・白身魚と、家庭の魚料理がもっとおいしくなるコツを1冊ずつ丁寧に解説しています。シリーズは今後も続いていきます。
Kindleシリーズ「魚屋の教科書」はこちら(Amazon)
Kindle Unlimited会員の方は追加料金なしでお読みいただけます。
Amazonのアソシエイトとして、おとと公式ブログは適格販売により収入を得ています。
